併殺をこわがっていては打撃はできない-。指揮官・岡田彰布の基本理念だ。細かくは書かないが20年以上前、阪神2軍監督だったとき。併殺打の多い打者が打席に入る際に「ゲッツー打ってこい!」と送り出したのは知られる話だ。

「悪い結果をこわがって当てにいくからゴロになる。こわがらずにキッチリ振るから打球が野手の間を抜けていくんや」。自らの経験を踏まえた、そういう考えがあるからだ。

この試合、阪神は4つの併殺打が出て、負けた。岡田は「全部、引っ張りやんか」と指摘。特に8番の梅野隆太郎には「一、二塁間に打て言うてんのに」とボヤいたが、基本、併殺に関する考えに変わりはない。

主軸打者にバント、犠打はさせないという面でも徹底している。「選手には役割があるんよ」。そういう思考の下、主軸は走者をかえす、打点をあげるのが仕事と決めている。

他球団、あるいは他の監督によってはプロでも4番にバントさせる場合もあった。昨季まで巨人監督だった原辰徳もそうだ。「バントがイヤなら巨人軍でなく個人軍になりますから」と話すのを直接、聞いた。

原も岡田も「チームの勝利が第一」の考えだ。だが岡田はそれをしない。なぜ? と聞いたことがある。「何の意味があんの?」。それが答えだった。勝つために主軸は打つべしという思想があるのだ。

それがどう影響したのかは分からないが日本一に輝いた昨年、阪神の併殺打数は「92」でセ・リーグ最少だった。しかし今季は多い。試合前まで「82」でセ・リーグのワーストタイだったがこの試合で4つを記録し、「86」で単独ワーストになった。

目立つのは大山悠輔か。リーグで併殺打がもっとも多いのはヤクルト・オスナで「19」。そして、2番目がこの日で「15」になった大山である。大山はこの日、1点を先制した1回に遊ゴロ併殺打。逆転された直後の5回には一ゴロ併殺打を記録した。

今季、大山の打席でヒットエンドランを仕掛けたこともあったが犠打はない。クリーンアップは強攻策。そこが機能すれば得点できるし、勝てる。機能しなければできないし、勝てない。そういうことだろう。

だからこそ主軸打者は結果を怖がらず、強くバットを振っていかなければならない。森下翔太も佐藤輝明も、もちろん大山も同じだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 5回表阪神1死一塁、一ゴロ併殺に倒れる大山。投手ヤフーレ(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 5回表阪神1死一塁、一ゴロ併殺に倒れる大山。投手ヤフーレ(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 7回表阪神1死一、二塁、遊ゴロ併殺に倒れる森下。投手大西(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 7回表阪神1死一、二塁、遊ゴロ併殺に倒れる森下。投手大西(撮影・鈴木みどり)