<高校野球東東京大会:二松学舎大付6-3小山台>◇29日◇決勝◇神宮球場

 肩の痛みに耐えながら、全力を尽くした夏が終わった。2番三塁で先発した佐藤晃は「今自分にできることはやりきった。エラーをしても『大丈夫』と言ってくれた先輩たちのおかげで自信を持ってできた」と感謝を口にした。レギュラー遊撃手として出場していた春季都大会期間中の4月に右肩を脱臼。今大会は肩への負担を軽くするため三塁手として出場した。肩をかばうため一塁への送球もワンバウンド。「相手に狙われるのは分かっていた」。打球は無慈悲にも三塁に飛ぶ。3つの内野安打を許した5回裏2死一、二塁で交代が告げられるまで、全力でできることをやり抜いた。

 4月12日。守備練習中にダイビングキャッチで飛び込むと、右肩に鈍痛が走った。脱臼。全く球が投げられない。「夏に間に合わせるため」と同月末に手術し、5月末からようやくキャッチボールを始めて回復に努めた。6月中旬、小山台の伝統である大会登録20人を選ぶ部員内投票では、万全の状態でないことからメンバーから漏れた。それでも福嶋監督が「度胸があるしチャンスで打てる必要な選手」と推薦し、7月の開幕直前の登録変更では背番号「16」をもらった。

 決勝前にも、ベンチに入れなかった3年生から「けがもあったけど、頑張ってくれ」と背中を押された。だからこそ、チームメートの期待に応えたかった。「出してもらうからこそ、やってやろう」。3回表には三塁打も飛び出し、その裏の守備では意地のノーバウンド送球でアウトも取った。甲子園の夢にはあと1歩届かなかったが、表情には充実感があふれた。

 2年生で経験した決勝の大舞台。「次は自分たちの代で勝って甲子園に行って、先輩たちに恩返しをしたい」。来夏は佐藤晃が小山台を支える番だ。【戸田月菜】