松坂先輩以来、20年ぶりの優勝へ好発進だ! 3年連続出場の横浜(南神奈川)のエース板川佳矢投手(3年)が、甲子園初先発し8回4安打無失点と好投した。打っては2回に先制打を放ち、愛知産大三河(東愛知)に7-0で快勝。昨秋神奈川大会でコールド負けし涙した左腕がチームを勢いづけた。2回戦は昨夏覇者・花咲徳栄(北埼玉)と対戦する。

 板川が、夢に見た甲子園のまっさらなマウンドに立った。栃木出身の小柄なエースはダイナミックにふりかぶり、左腕を振った。初回から2イニングを3者凡退。3回に四球から2死三塁のピンチを迎えたが、1番石川颯を練習してきたチェンジアップで空振り三振に切った。

 板川 楽しめた。ずっとワクワクしていた。甲子園で先発するという1つの夢、目標が達成できた。

 直球は130キロ台中盤。8対2の割合で変化球を投じ、相手の打ち気をそらした。味方の好守にも助けられ8回4安打7三振無失点。昨夏1回戦(秀岳館)は負けている展開の中、5番手で登板だった。1年後、悔しさを晴らした。

 昨秋の準々決勝(鎌倉学園)でコールド負けし、センバツには出られなかった。板川は5回途中から救援したが四死球を連発し大乱調に陥った。「みんなに申し訳ない」と泣きながら父親に電話をかけた。仲間からは日誌を通してエースの自覚を問われた。板川は「やるしかなかった」とメンバー練習を外された後、走ることもトレーニングも人の倍やった。「みんなが少しずつ認めてくれた」。背番号1の重みが分かった。

 この日の朝、宿泊先の周りをみんなで散歩した。板川がLINEで呼びかけ、チームの士気を高めた。横浜の夏の甲子園優勝は中日松坂大輔投手(37)を擁して春夏連覇した98年までさかのぼる。「松坂さんは憧れ。比べられないくらいすごい人ですが『横浜の背番号1と言えば板川』と言われる存在になりたいです」。20年の時を経て「YOKOHAMA」のエース板川が新たな歴史を作る。【和田美保】

 ◆板川佳矢(いたがわ・よしや)2000年(平12)4月8日生まれ、栃木県出身。栃木・野木中では4番中堅手で活躍。同郷で横浜OBの成瀬善久投手(32=ヤクルト)とは中学の担任が同じという浅からぬ縁。173センチ、70キロ。左投げ、左打ち。