龍谷大平安(京都)が第100回全国高校野球選手権大会で、悲願の春夏通算100勝を成し遂げた。12年夏の甲子園1回戦・旭川工(北海道)戦で同校がサヨナラ勝ちした瞬間を見て入学した2番安井大貴外野手(3年)が、9回2死三塁からサヨナラ打。今年4月に亡くなったOB衣笠祥雄氏(享年71=元広島)が楽しみにしていた節目の勝利。男の約束を果たした原田英彦監督(58)は、男泣きした。

 100勝にかける原田監督の執念がナインに乗り移ったようだった。8回同点に追いつかれ迎えた9回。底力を見せたのは、2死無走者と追い込まれてからだった。1番水谷が四球で出塁すると「1本でかえれるように」と、2番安井への2球目に二盗、5球目で三盗。どちらもノーサインだった。50メートル6秒3と、足は決して速くない。「どんくさい」と言われていた水谷を、勝利への思いが突き動かした。

 9回2死三塁、サヨナラ打を放ったのは安井だった。「自分が絶対決めてやる! と振り切ることができた」。6球目を左翼線へ運ぶと、笑顔のナインが出迎えてくれた。ベンチ前には涙をぬぐう原田監督の姿。安井も思わず、もらい泣きした。

 安井が龍谷大平安に入学を決めたのも「サヨナラ勝ち」がきっかけだった。小学6年だった12年夏の甲子園。安井は龍谷大平安と旭川工の試合を一塁側スタンドから見守っていた。9回に2点差を追いつき、11回に逆転サヨナラ勝ちを決めた当時のナインの姿に「絶対、平安に行くと思った。諦めない野球をしていた」。憧れた「HEIAN」のユニホームで、節目の1勝を自身のヒットでしるした。

 今年の3年生が入学する直前、16年のセンバツ準々決勝で99勝を達成。大会を制した智弁学園(奈良)との準決勝であと1アウトが取れず、サヨナラ負けした先輩の姿は目に焼き付いていた。「絶対に監督に100勝させると言っていました」と安井。グラウンドのホワイトボードには、松田主将が書いた「夏100勝」の大きな文字。練習用帽子のつばには、ナインのほとんどが「100勝」と記す。この日の試合中も「100勝やぞ!」という言葉が飛び交った。

 松田は「100勝を達成するために甲子園に来ました」と言った。100回の夏、平安の歴史に100勝の1ページを刻んだ。【磯綾乃】