龍谷大平安(京都)が第100回全国高校野球選手権大会で、悲願の春夏通算100勝を成し遂げた。

 サヨナラ勝ちの瞬間から原田英彦監督(58)は泣いていた。「本当に苦しかった」。お立ち台でも、晴れやかな顔が見る見るうちに泣き顔になった。「100回大会が待ってくれていた、そう取ります。まだ次のことを考えたくない」。それだけ100勝にかけていた。

 99勝に到達した16年センバツから2年が過ぎていた。周囲の期待の声に眠れぬ日々も続いた。春先、阪口慶三監督(74)率いる大垣日大(岐阜)と練習試合で対戦。「阪口監督、お元気ですね」「原田君、100回大会に出られるんだから」。脊柱管狭窄(きょうさく)症を患っていた名将を生き生きとさせる100回大会の力を感じた。

 空の上から見守ってくれた人もいる。親交のあった人形浄瑠璃の竹本住太夫さんが、今年4月に亡くなった。原田監督が贈った「叶日本一」と書かれたお祝いの花を、楽屋の真ん中に飾ってくれた。OBの衣笠祥雄氏には、昨年11月の食事会で「来年の夏、頼むぞ」と必勝を託された。その時の写真をこの日も忍ばせ「よかった、と笑っておられるでしょう」と大先輩を思った。アルプス席に走り、この夏のお決まりの掛け合い。「お前たち、最高だぜー!」と叫ぶ原田監督に「うおー!」と応えるナイン。いとしい選手たちと悲願を達成した。【磯綾乃】