<全国高校野球選手権:大阪桐蔭17-0常葉学園菊川>◇18日◇決勝

 大阪桐蔭(北大阪)が17-0で常葉学園菊川(静岡)に大勝し、初出場で優勝した1991年(平3)以来、17年ぶりの日本一に立った。萩原(はぎはら)圭悟内野手(3年)の3試合連続本塁打、奥村翔馬外野手(3年)の史上35本目の満塁弾など決勝での最多タイ17得点。エース福島由登(ゆうと=3年)が98年の横浜・松坂大輔(現レッドソックス)以来となる決勝完封と記録ずくめの全国制覇。常葉学園菊川は左ひじ痛に耐えて先発した戸狩聡希(としき)投手(3年)が3回までに5失点。準決勝まで4試合連続逆転勝ちした強力打線が散発5安打と沈黙し、静岡県勢82年ぶりの優勝はならなかった。

 右翼の守備位置から奥村が、駆けてきた。加速のついた78キロを、全身で萩原は抱き留めた。9回の守備に向かう前、2人でかわした約束通り。一塁の萩原が「早くみんなのところまで来いよ!」と声をかけ、奥村は「お前は待ってろよ!」と返事した。抱き合った4番、5番がナインの歓喜の輪に飲み込まれた。

 6回で12点差。だが相手は、史上初の3試合連続ビッグイニングを作った常葉学園菊川だ。まだ、分からない。7回。そんな不安を、4番萩原の2ランが吹き飛ばした。清原(PL学園)、香川(浪商)らに並ぶ個人連続試合本塁打タイとなる3試合連続アーチ。大会通算打点は新記録の15打点となった。「生きてきた中で最高の日」と、空を仰いだ。この日49歳の誕生日を迎えた父政宏さんは「80歳になっても覚えていますよ」とほほえんだ。

 一方的な流れは、5番の奥村が作った。1回1死で、バックスクリーンに満塁弾。「つないで点を取りたかった。最高です」とガッツポーズを繰り返した。昨秋の近畿大会大阪府予選で、PL学園に0-9と完敗した。チームはバラバラになり、西谷監督に「最悪のチーム」としかられた。気持ちの弱さがもどかしかった。「中田らと比較され、自分たちは弱いと思い込んでいた。自信をなくしたまま、終わらせたくなかった」(同監督)。選手の目の色が変わった。いてつく生駒の冬、萩原も連日、重さ1キロのトレーニングバットを振り続けた。今春の近畿大会大阪府予選で、PL学園に1-6から逆転勝ち。自信が芽生えた。

 今夏の甲子園2回戦の相手、金沢の浅井純哉監督(51)が「高校野球を指導している者なら、いつかはこういう打線を作ってみたいと思う打線。それが今年の大阪桐蔭です」と評した。理想の打線の4番を務めた萩原は「自分の力を最大限に生かせる。甲子園は最高の場所でした」と晴れやかに笑った。【堀まどか】