DeNAが「土壇場力」をこれでもかと発揮して、ヤクルトをうっちゃった。1点を追う9回、代打の中川大が同点の適時二塁打。延長に持ち込むと、10回に筒香嘉智外野手(26)が決勝の5号ソロを放ち、4番ロペス、5番宮崎との本塁打そろい踏みを完成させた。昨年8月22日広島戦でクリーンアップ3連発でのサヨナラ勝ちを決め、日本シリーズまで一気のチャージをかけたDeNA。加速の気配がぷんぷんする。

 満員の神宮の半数近くを占めた青いファンが、沸き立った。延長10回1死。筒香は、ヤクルト秋吉が投じた2球目の内角スライダーを豪快に払った。「ホームランだと思いました」。確信を持って、ゆっくりと走りだした。リーグトップタイとなる決勝の5号ソロ。「全員で勝ち取った試合です。自分のホームランより、全員で勝てたことがうれしい」。お立ち台で何度も「全員」と繰り返し、千金打を傍らに置いた。

 土壇場を制したのは千両役者で、演出したのは土壇場の男だ。1点を追う9回1死二塁、代打の中川大が右中間へ同点の適時二塁打。昨季楽天を戦力外となり、長打力を買われて加入した27歳の「思い切って、腹をくくれた」一振りだった。試合前、練習中にかつての監督で長打力を買ってくれた大久保博元氏と遭遇。「大志! 何でもいいから頑張れ! とにかく頑張れ!」と強いハッパをかけられた。二塁上で三塁側ベンチに向かって夢中でガッツポーズし、戻ると仲間に飛び込んだ。大黒柱が燃えないわけがなかった。

 筒香、ロペス、宮崎。クリーンアップの本塁打そろい踏みで劣勢をひっくり返した。筒香は「みんながみんなのことを思って、チームを思っている形が、こういう結果になった。全員で勝つことが大事」と冷静に振り返り、ラミレス監督は「中川はやり遂げた。本当によくやってくれた。クリーンアップがそろい踏みした試合は、勝たなくてはいけない」と気持ちの高揚を隠さなかった。昨季終盤に猛威を振るったDeNAの土壇場力。CSファイナルSで沈めた広島を抜き、首位に立った。【保坂恭子】