「東海キャノン」が南国でもさく裂した。今秋ドラフト候補の東海大・海野(うみの)隆司捕手(3年=関西)が4日、キャンプを行う沖縄・国頭村でホンダ鈴鹿とのオープン戦で二盗を2度刺した。

1回表、最初の盗塁を刺した。ネット裏で視察していた楽天鷹野スカウトと、オリックス谷口スカウトが一塁側スタンドへ移動した。「こっちのほうが正確な二塁送球タイムを計りやすいので」と谷口スカウト。その後はホンダ鈴鹿の走者が出るたびに、記者も含めた3人のストップウオッチ音が1球ごとに「ピッ、ピッ」と鳴った。

7回1死一塁。ホンダ鈴鹿の一塁走者、大城戸匠理外野手(28=法大)がスタートを切った。投球は直球。海野は機敏な所作で、ほぼ完璧な二塁送球。この日2度目の盗塁阻止を果たした。記者のストップウオッチは1秒81。鷹野スカウトの計測も同じく、1秒81だった。

初めて海野を視察した鷹野スカウトがうなった。「これは、すごい…」。実は直前のイニング間送球でも、同スカウトの計測では1秒74が表示されていた。「肩は甲斐(ソフトバンク)にも負けないのでは。プロでも最上位クラスだと思う」と驚嘆した。

谷口スカウトも「二塁送球1秒8といっても、投球を外して、ベース近くまで踏み込んで投げて1秒8という捕手もいる。海野君は通常の捕球位置で投げてのこの数字だからすごい。捕手らしくどっしり見えるし、構えも低いから投手が投げやすい」と賛辞が止まらなかった。

試合後、球場横のビーチでの写真撮影へ歩きながら、海野は「この間、1つ盗塁を刺せなかったんです」と苦笑いしながら教えてくれた。東海大はこの日でオープン戦5試合を消化。盗塁を8度企図され、許した盗塁はその1つだけ。盗塁阻止率は驚異の8割7分5厘になる。

さらには「去年のように、球が指にかかりきっていないんです。試合を重ねれば、まだ速くなると思います」と言うから驚かされる。春季リーグ戦の開幕まで約1カ月。海野は「ドラフト候補」にとどまらず、どうやら「ドラフト上位候補」として熱視線を浴びる様相になってきた。【金子真仁】