巨人のドラフト1位高橋優貴投手(22)が、阪神3回戦(東京ドーム)に初登板初先発し、プロ初勝利を挙げた。大卒新人では60年青木以来、球団59年ぶり。この日は阪神もプロ初登板の浜地真澄投手(20)が先発。伝統のGT戦史上初となる初登板同士の先発対決を6回1失点の好投で制した。巨人の新人が「伝統の一戦」で初登板初勝利を飾ったのは史上初。全国大会未経験も等身大を貫いた肝っ玉ルーキーが偉業で門出を飾った。

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夢に見た景色が広がった。高橋はジャビット人形を左脇に抱え、プロ初のウイニングボールを左手に握った。お立ち台からスタンドで見守る両親への言葉を並べた。「ここまで育ててくださって、ありがとうございました。これからはこうやって、活躍して恩返ししていきたいと思います」。感謝の思いを込めて晴れ姿を届けた。

幼少期にファンだった阪神打線相手に、目いっぱい力を出しきった。最速142キロの速球を中心にスライダー、スクリューで緩急をつけた。「調子は悪くなかったので冷静に投げられました」。引き締まった表情でテンポよく腕を振った。6回までソロ1本だけの4安打1失点。十二分に役目を果たした。

晴れの日まで、1歩ずつ歩んだ。元々衝動買いをしないタイプ。3月に買い物に行った際、2万円後半の「ポーター」のトートバッグを見つけたが「思ったより高かったので」と購入を見送った。即戦力のドラ1として入団も「僕は代表に入ったこともない。上茶谷、甲斐野、松本、清水と同じ土俵に立ってるのがおかしいくらいですよ」と背伸びはしなかった。

だからグラウンドでも、高望みせず1歩ずつ着実に課題を克服してきた。2月のキャンプ中の紅白戦では変化球の制球とセットポジションの精度。3月のオープン戦ではマウンドでのしぐさ、振る舞いを意識した。「階段を飛び越さないようにしたい。でも今、目の前にあるチャンスをつかまないと、この先もずっとつかめないと思う」。この日もいつもと同じスタイルで初勝利をつかんだ。

上原、菅野も達成できなかった球団59年ぶりの大卒初登板初勝利の偉業を成し遂げた。「伝統の一戦」で初登板初勝利を挙げた新人は、これまで1人もいなかったが、高橋が歴史を刻んだ。今後は日程の都合で登録抹消され、2軍戦で登板を重ねながら次回登板を待つ。「いろんな人の助けがあっての勝利だと思います。日々勉強して頑張りたい」。等身大の22歳の可能性が無限に広がった。【桑原幹久】