引き締まった肉体のまま身を引いた。巨人上原浩治投手(44)が20日、都内のホテルで会見し、現役引退を表明。

異例のシーズン途中での引退に涙を流した。雑草魂で、日本人初のワールドシリーズ胴上げ投手にまではい上がったレジェンド右腕が、栄光のマウンドに別れを告げた。

人目をはばからず涙を流した。上原が会見の冒頭で言葉を詰まらせた。「本日をもちまして、21年間の現役生活を終えたいなと思います」と一息ではき出すと約10秒間の沈黙で涙腺が決壊した。「これまで自分に関わってくれた人、方々に感謝したいと思います。ありがとうございました」。紺色のハンカチで涙を拭った。

常に1軍マウンドが主戦場だった。だが、今季は開幕から日米を股に掛けたベテランが、2軍暮らしを強いられた。昨年10月に左膝のクリーニング手術。開幕2週間前にフリー打撃で「去年とは比べものにならないぐらい良い状態」と手応えを強調した。体重は昨季の90キロ超から3、4キロ絞った。「食事は1日3食。酒も量は少ないけど毎日飲んでいるから、トレーニングじゃないですかね」と自認する経過は順調だった。

今季の1軍登板はオープン戦だけで、2軍戦は9試合で防御率4・00。1軍昇格には届かなかった。ただ肉体面は「20年前の体重と変わらない。体を軽くしたかった」とプロ4年目の最多勝を獲得した時期と重ねた。一方で今季で身を引くことは決まっていた。「最初から決めていたことなんで。3カ月が僕の中では勝負と思っていた」。設定した4月末までの1軍未昇格が決め手にもなったと明かした。

結果至上主義に反することはできなかった。体調、練習量はキープできたが「その状態の中で2軍戦で通用していなかったというのが、自分の中で気持ち的に後ろ向きになったのかなと思ってます」。打者との対戦の中で、衰えを潔く認めた。無名の浪人生からはい上がった21年間のプロ生活。反骨心を原動力として、雑草に大輪の花を咲かせた。【為田聡史】