侍大将が集大成の涙を流した。東京(オリンピック)五輪で金メダルに導いた侍ジャパン稲葉篤紀監督(49)が9月30日、都内で就任4年の任期を終え、退任会見に臨んだ。冒頭のあいさつで選手、球界関係者、ファンらへの感謝を口にし、締めの一言を迎えた時だった。

「監督就任の話をいただいた当時、迷っていた私の背中を押してくれてこの4年2カ月の間、最大の理解者であり応援し続けてくれた妻、そして子どもたちに心からの感謝を伝えさせてください…」。言葉が途切れた。涙もろさを自認する指揮官はもう耐えられなかった。「本当にありがとう」。もう耐える必要もなかった。

会見ではサプライズで巨人坂本、ヤクルト山田、ソフトバンク甲斐、レッズ秋山と戦友のビデオレターが届き、関係者からハンカチを差し出された。最後は花束贈呈でDeNA山崎が登壇し、涙腺は決壊した。

この日は恩師の野村克也氏の墓前にも悲願成就を報告。野球人生に交差したすべての人に恩義を感じている。今後の侍ジャパンへ「日本の野球は世界で1番だというところを常に目指してこれからもやっていただきたい」と思いを託した。【広重竜太郎】

 

○…日本野球機構(NPB)は後任監督について年内の決定を目指している。24年パリ五輪では競技から除外され、次なるターゲットはWBC。コロナ禍で当初の今年3月の開催から延期となり、23年開催が見込まれているが正式決定には至っていない。感染状況が安定していれば、来年開幕前に強化試合が行われる可能性があり、新体制の初陣となる。