この男のバットには全てをひっくり返しそうな魔力がある。阪神森下翔太外野手(25)が希望の19号アーチをかけた。ベースを悠然と回る背番号1に満員札止め、4万2642人で膨れ上がった甲子園から大きな歓声が降り注いだ。

「やっぱりホームですから。ファンの人たちも盛り上がっていますしね。甲子園なので広いですけど、終盤に点を取れたのは明日につながると思います」

1-4の8回。巨人の投手は大勢だ。さすがに今日は無理か…。約1カ月ぶりに帰ってきた甲子園だったが、完敗ムードが漂っていた。だが、森下は違った。カウント2-2から、高めに浮いてきたスライダーをどんぴしゃりのタイミングでしばき上げた。白球は浜風にも乗って、120メートル先の左翼席へと吸い込まれた。「相手は大勢さん。じっくり引きつけて見るというよりは、真っすぐのタイミングで打ちにいかないといけない。4打席目に今までの反省も踏まえて自分の中で修正したので」。失投を逃さず、仕留めた。

甲子園は息を吹き返し、ボルテージが急上昇。その熱狂のまま、4番の佐藤輝が続けざまの34号を打つのだから、たまらない。1カ月近く待たせた虎党に夢の時間をプレゼント。惜しくもあと1点届かなかったが、眼下の敵・巨人に首位独走チームの強さを示す攻撃となった。

19号は佐藤輝に続くリーグ2位。長距離打者のノルマでもある初の20発にも王手をかけた。打点も72に増やし、10差で1位の佐藤輝を追いかける。「相手の勝ちパターンの投手から1本打てたけど、次はそう、うまくいかないと思う。そこも踏まえて、ちゃんと自分のスイングができるように準備したいです」と緩めなかった。少し鳴りをひそめていた森下のバット。優勝への最終コーナーに入り、改めて存在感をぐっと高めた。【柏原誠】

【阪神】久々甲子園、負けても強い虎…“アイブラック兄弟”森下翔太と佐藤輝明が8回連続弾で粘り