WBO世界ライトフライ級王者の田中恒成(22=畑中)が、ついに全国デビューを果たす。9月13日、エディオンアリーナ大阪で行う2度目の防衛戦がTBS系で全国ネット中継されるわけやが…遅すぎるよな。

 15年6月、WBO世界ミニマム級王者になった。日本最速のプロ5戦目での世界奪取やった。16年の大みそかには、現在のベルトを手にした。これはプロ8戦目、WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥と並ぶ日本最速の世界2階級制覇。すごい経歴で、そもそもが“中京の怪物”なんて異名におさまるタマやない。

 何がすごいんか? う~ん、自分はボクサーやないから、うまく言えませんが、要は「素人目で見てもすごい」んです。

 6月5日、名古屋市の畑中ジムで田中の公開練習を見た。ライトフライ級王座初防衛後の再始動やったんで軽く動いただけやけど、その“軽く”がすごかった。リング上と大鏡の前でのシャドーボクシング。右利きのオーソドックスやのに、時々急に、ひょいっとサウスポーにスイッチする。それがまた「ほんまは左利きか?」と思うしなやかさ、素早さ、ド迫力なんですわ。

 田中は7月初旬、オーストラリアに出向いて、マニー・パッキャオの世界戦を現地観戦した。アリーナ席やったらしいが、その時のことを笑いながら説明してくれた。

 「パッキャオが米粒ですよ。目を凝らさないと…凝らしても見えなくて。ちゃんと見ようと思えば、スタンドの特大ビジョンしかない。『これ見るんなら、日本でテレビ見てても一緒やな』と。だから、現場の空気感だけを感じてました」

 口調はどっちか言えば、ほわんとしていて、つかみどころがない。それでいて、次の2度目の防衛戦に向けた抱負は「こないだはKOするって言って、判定。ウソついたんで、今度はKOします。う~ん、中盤ぐらいかな」。言いたいことは、はっきりと言う。

 次戦をクリアすれば、その次はWBA王者田口良一との統一戦が既定路線。そこも越えたら、階級を上げて、フライ級…。“中京の怪物”から、エリアが取れて“怪物”になるはずの全国デビュー戦は見逃せませんよ。【加藤裕一】