竜電(27=高田川)が06年夏場所の序ノ口デビューから12年目で念願の新入幕を果たした。初場所(1月14日初日、東京・両国国技館)の番付は東前頭16枚目。「番付表を見て知りました。(九州場所の白星が)8番だったんで…。(負けた14日目、千秋楽に)9、10番勝っとけば確定の勢いだったんですが。心の弱い面が出た。稽古でもっと強くしないと」。26日の番付発表で、苦笑いまじりに喜びを語った。
嫌な音を3度も聞いた。待望の新十両で迎えた12年九州場所8日目に右股関節を骨折した。「折れた瞬間“ボコン”と音がした」。その後、同じ音を2度。場所が場所だ。「的確な治療法がない。骨がくっつくのを待つしかない」と師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)が説明する“大けが”だった。2年間は相撲が取れず、治っても最初はおっかなびっくりだった。竜電は「周りの方の支えのおかげです。励ましの言葉を心に刻んで。それと、このままじゃ終われないという思いだけです」と話した。
周囲の支えはなくてはならないものだったろうが、それに匹敵するほど大きかったのは、師匠の“厳しい優しさ”ではなかったか。高田川親方は言う。「私が言い続けたのは『弱いからケガをするんだ』ということ。ケガをしたことは相撲の神様の『もっと鍛えなさい』というメッセージなんだ。それを克服したら、本当の力士になれるんだ、ということです」-。
関取経験者が序ノ口まで陥落し、その後に新入幕したのは92年九州場所の琴別府以来2人目。琴別府の新入幕も竜電と同じ27歳で、序ノ口デビューから12年目のことだ。琴別府の最高位は95年春場所の東前頭筆頭で、三役にあと1歩届かなかった。
高田川親方の厳しい優しさは、続く。「今からが竜電の本当の相撲人生。苦労した分、来年の早いうちに、一気に三役に上がってほしい。三役じゃないと、名前を覚えてもらえない。それだけのものはあるんだから」-。序ノ口からはい上がった関取経験者の新三役。角界史上最大のカムバックが実現すれば、それは角界の語り草になる。【加藤裕一】


