天国で見守る先代師匠に伝授された技で、懸命な攻めを見せた。西三段目44枚目鋼(39=陸奥)は白旺灘に逆転の上手投げを食らって1番相撲から2連敗となったものの、もろ差しで土俵際まで追い詰めた。「師匠みたいに、もろ差しで寄り切りたかったんですけどね」と苦笑い。もろ差しの名人だった先代井筒親方(元関脇逆鉾)が死去して、16日でちょうど1年。去年の秋場所後、横綱鶴竜、三段目鶴大輝らとともに旧井筒部屋から陸奥部屋に転籍した。鋼は「あっという間の1年だった」と神妙な面持ちだった。

コロナ禍で、感染予防のため一周忌には参加できなかったが、思いをはせる機会があった。秋場所直前に鶴大輝と旧井筒部屋を訪問。仏壇に手を合わせ、先代師匠と会話した。「先代が喜んでくれると思い、こんなことがあったなと思いながら。いろいろ考えた」。思い出がよみがえった。

横綱鶴竜は初日から休場しているだけに、2人には期するものがある。1勝1敗の鶴大輝は「場所後に先代に手を合わせて、いい報告ができるようにしたい」。先代師匠の顔を思い浮かべ、土俵に上がり続ける。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)