【ラスベガス(米ネバダ州)21日(日本時間22日)=阿部健吾】ボクシングの前WBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)が、進退について熟考することになった。20日(同21日)の2度目の防衛戦で同級3位ロブ・ブラント(米国)に0-3で判定負けしてから一夜明け、取材に対応。今後について周囲と相談して考える旨を示した。再戦の選択肢も残すが、貫いてきたスタイルで完敗した事実は大きく、すぐに結論を出すのは難しくなった。

試合を終えて約14時間後。「目が目なのでサングラスですいません」と断りを入れた村田の顔は、痛々しく腫れていた。ボクシング人生で初めて刻まれたダメージの大きさを抱えながら、慎重に言葉を探した。

「それはあまりイメージしてないですね。イメージするだけ無駄な話で。その通りにいくことではない。納得する形で周りの方と話していかないと」

今後について。期限などを設けて結論を出すのかと問われ、そう切り返した。納得する決断がでる時期がいつか、当人も分からないだろう。夢にみたラスベガスの世界戦での敗戦、完敗という現実。失望感、虚無感にさいなまれているだろう内面に向き合い、何かを決めるのはしばらく時間がかかりそうだ。「振り返って、ああいう経験が良かったなと思うのが人生。それがあるから今があると思えるように、これからの人生を歩んでいきたい」と自らを鼓舞するように言った。

帝拳ジムの本田会長は進退に関し、「村田の場合はいろいろ背負うものが大きすぎる。ただ、やればいいというものではない」と説明。契約する米大手プロモーター、トップランク社のアラム氏が来春の再戦を示唆したが、「ゆっくり話し合って」と述べるにとどめた。敗因は「我々全員の油断」とし、9月上旬に風邪をひき調整が遅れたことが最後まで響いたと明かした。

日本人未踏の地を切り開いてきた村田。その歩みをしばし止め、決断を下すことになった。