3階級王者のWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が5階級王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)を3-0の判定で下し、WBSS優勝を飾った。尚弥の弟でWBC世界バンタム級暫定王者の井上拓真(23=大橋)は、同級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(33=フランス)に0-3の判定で敗れた。
■井上尚弥の話 ドネア選手がめちゃくちゃ強かった。(右目上を切った)2回から最後までぼやけていた。世代交代といえる内容ではなかった。これが今の実力。1年間闘って、優勝できたことは満足している
■ドネアの話 井上尚が真のチャンピオンであると証明した試合だ。今まで闘ってきた中で、自分のパンチをあれだけ耐えられる選手はいなかった。率直におめでとうと言いたい
◆ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ・バンタム級決勝12回戦
井上尚弥 | 3 | 12回判定 | 0 | ドネア |
【1回】 互いにジャブで距離を探る両者の立ち上がり。中盤過ぎ、互いの左フックが相打ちとなり顔面をとらえると、観衆が大きくどよめく
【2回】 2分過ぎ、井上尚をロープ際に追い込んだドネアの左フックが井上尚の顔面をとらえる。井上尚が右目上から出血
【3回】 出血した井上尚に対し圧力を強め、攻勢に出るドネア。左右にかわしジャブを繰り出す井上尚だが、ドネアのプレッシャーも止まらない
【4回】 互いにジャブでかいくぐり、連打につなげようとするが当てさせない。終盤ドネアが左の連打から右ストレートがヒット
【5回】 中盤過ぎ、井上尚の左ジャブが伸び、ドネアにヒットし始める。残り30秒、井上尚が振り下ろし気味に放った右ストレートがヒットし、ドネアの腰が落ちる。井上尚が左右の連打でドネアをコーナーに追い詰め、懸命にかわすドネアにさらに右ストレートをヒットさせる
【6回】 やや動きが鈍ったドネア。左ジャブから右を放ちドネアに迫る井上尚。終盤、ドネアの左フックを交わし、井上尚の左フックがヒットする
【7回】 互いの攻防が続くが決定打はなし。中盤過ぎ、手数を強めた井上尚にドネアも応酬。井上尚がカウンターから左フックをヒットさせる
【8回】 ドネアが手数が増す。ドネアの連打をかわしボディーに左フックを放った井上尚に対し、ドネアの右ストレートがヒット。井上尚の動きが止まる。攻勢を強めるドネアの連打で井上尚の出血が再び増す
【9回】 やや動きが鈍った井上尚に対し、圧力を強めるドネア。左ジャブが井上尚のあご付近をとらえ、さらに連打をもらった井上尚の動きが止まる。井上尚のクリンチを振りほどき、ドネアが連打
【10回】 両者ジャブを繰り出すが一進一退の攻防が続く
【11回】 前に出る井上尚に、一歩も引かないドネア。残り1分過ぎ、井上尚が放った右アッパーからの左フックがドネアのボディーを芯でとらえる。顔をしかめ後ずさりしたドネアがたまらずダウン。クリンチで逃れるドネアを、大歓声を背にした井上尚が攻め立てるが、ドネアは倒れない
【12回】 動きが落ちながらも前に出るドネア。井上尚の左ボディーからの右ストレートでさらにドネアの動きが弱まる。何とか左ボディーを放つドネアに対し、井上尚はなおもカウンターの右ストレートをヒットさせる。連打でたたみかける井上尚に対し、ドネアも最後の力を振り絞り左右の強打を放つが空を切る。試合終了のゴングが鳴ると、両者が抱き合う。116-111、117-109、114-113の3-0判定で井上尚が勝利。苦しみながらも階級最強の称号を手にした。
◆ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS) 米プロモート大手で要職に就いていたリチャード・シェイファー氏、カレ・ザワーランド氏の米独プロモーターがタッグを組んで企画された階級最強を決める大会。各階級に世界主要4団体の王者が君臨しているため、賞金を設定して出場を求め「真の最強」をトーナメント形式で決定。シーズン1として17年秋から約1年かけてクルーザー級とスーパーミドル級を開催し、賞金総額が50億円以上とされていた。18年秋からはシーズン2が開幕。バンタム級、スーパーライト級、クルーザー級の3階級が組まれ、10月26日、英ロンドンでスーパーライト級決勝が開催され、WBAスーパー・IBF王者ジョシュ・テイラー(英国)が制覇した。
◆WBC世界バンタム級王座統一戦12回戦
井上拓真 | 0 | 12回判定 | 3 | ウバーリ |
【1回】 互いにパンチが当たる中間距離で打ち合う。再三、前に踏み込み左を放つウバーリを井上拓が見切る
【2回】 中盤、前に出たウバーリの左をかわした井上拓の右ボディーがヒット。ウバーリがぐらつきレフェリーが試合を止めるが、スリップの判定
【3回】 中盤過ぎにウバーリの右アッパーが井上拓の顔面をとらえる
【4回】 積極的に前に出るウバーリが井上拓を2度3度とロープ際に追い込む。2分過ぎ、ウバーリの強烈な右ストレートを食らった井上拓がダウンを喫し尻もちをつく。たたみかけるウバーリのラッシュを井上拓が必死のクリンチで耐える。4回を終えてのジャッジは3-0でウバーリ
【5回】 1分過ぎ、ウバーリが井上拓がコーナーに追い込む。受けてかわす展開が続く井上拓だが、終盤に右カウンターがヒット。ペースを渡さない
【6回】 ウバーリの圧力にひるまず井上拓がカウンターを狙い続ける。互いに決定打はなし
【7回】 手数が落ちたウバーリ。井上拓もフェイントを交え前に出る
【8回】 再び手数が増えたウバーリだが、井上拓も冷静に対処しカウンターを狙う。膠着(こうちゃく)状態が続く。8回を終えてのジャッジは3-0でウバーリ
【9回】 井上拓がカウンター気味に放つ左ボディーがウバーリの脇腹にヒット。ウバーリが何度か顔をゆがめるが連打にはつながらない
【10回】 劣勢の井上拓に対し、手数を増すウバーリ。ウバーリの攻撃を見切る井上拓だが、積極的に打って出ることができない
【11回】 互いに決定打はなし。セコンドの父真吾トレーナーからは「行かないと!ラストだよ!」の声が響く
【12回】 中盤過ぎ、ウバーリのパンチをもらいながら井上拓が前に出る。時に足を止め危険覚悟で連打を繰り出す井上拓。右フックを食らったウバーリが大きく体勢を崩す場面もあったが、倒すまでには至らなかった。0ー3の判定で井上拓が敗れ王座陥落