大相撲の横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が、進退を懸けて初場所(13日初日、東京・両国国技館)に出場する。

10日、都内の部屋で稽古後に「非常に順調。あとは場所に臨むだけ」と決意表明。新番付が発表された昨年12月25日から出場の意向を示していたが、出場の意思表示を迫られる今日11日の取組編成会議を前に、心変わりはなかった。いよいよ“待ったなし”の戦いが始まる。

周囲の声に惑わされない芯の強さが、稀勢の里の決意を物語っていた。体調不良で前日9日の稽古を休んだ弟弟子の大関高安が、稽古を休むことは前日から決まっていた。同部屋には他に関取衆は不在。番数の少なさを指摘する親方衆や解説者らが多い中、出稽古も行わなかった。その後、部屋で約1時間、四股やすり足などで汗を流すと「非常に順調。いい流れでやれた。思い通りの状態に近づいてきたし、焦りもない。あとは場所に臨むだけ」と、決意を表明した。

7日の稽古総見は横綱鶴竜、大関豪栄道と計6番で3勝3敗と、質量ともに不安を残した。9日は昨年11月の九州場所で初優勝した関脇貴景勝を8勝1敗と圧倒。内容は見返したが、依然として稽古量は少なかった。だがこの日「(報道では)番数とか気にするが、それに偏りすぎ。人とやる稽古もあるし、自分と向き合う稽古もある」と反論。九州場所を途中休場後、12月の冬巡業を全休し「体を見つめ直すことができた」と明かし「いい稽古ができた」と、軽めの調整ではないと強調した。

入門以来、先代鳴戸親方(元横綱隆の里)の指導のもと、猛稽古で強くなってきた。だが先代が他界してすでに7年以上。疲労の回復も遅くなり、何もかも当時を踏襲できるわけではない。ハイペース調整で、早々と仕上げながら先場所は初日から4連敗(不戦敗を除く)。「1番いい体調で臨みたい」と、相撲人生の土俵際で新境地を求め、貴景勝ら若手にも「負けていられない」と対抗心を燃やす。心身共に充実した状態に仕上げ、進退場所への出場を決めた。【高田文太】