「令和の怪物」旋風の、再来を予感させる勝ちっぷりだ。自己最高位の東前頭9枚目で臨む伯桜鵬(21=伊勢ケ浜)が、優勝争いのトップの一角だった前頭阿武剋を寄り倒し。取組前は1敗だった相手に快勝し、自身と同じ2敗に引きずり降ろした。新入幕の23年名古屋場所で、千秋楽まで優勝を争い、敢闘賞と技能賞をダブル受賞。その後、左肩手術で2場所全休し、幕下まで転落したが、食事など土俵外から見直した大器が、いよいよ覚醒寸前だ。
◇ ◇ ◇
迷いもなく、ぶちかました。前日6日目に変化で敗れた恐怖心を封印し、伯桜鵬は立ち合いで頭から突っ込んだ。相手の頭が鼻を直撃しても、前に出続けてもろ差し。休まず攻めて寄り倒しで転がした。勝ち名乗りは、大量の鼻血を流しながら受けた。「しっかり中に入って、前に出られたのがよかった。思い通りにできた」。度胸満点でつかんだ白星に、胸を張った。
直近6場所で唯一、皆勤して2桁白星に届かなかった昨年秋場所後、それまでは「気にしていなかった」という食事から見直した。食べ方は「早食いだったのを、ゆっくり時間をかけてたべるようにしたら消化が良くなった」と変えた。体のメカニズムとして、最優先される消化が早々に終わると、その分、体は疲労回復に時間を割くという。連日、昼寝も含めて10時間の睡眠と相まって「疲れなくなった」と、感じている。
さらに食事を「食欲として取っていない」と、体づくりの義務と考えるようになった。大相撲定番の1日2食だが「毎日同じものを食べる。米、卵、肉」だという。苦手だったご飯は、どんぶりで昼、夜ともに3杯ほど、量を食べるようにした。卵は目玉焼きやゆで卵で1日10個。肉は牛肉のハラミや赤身、鶏もも肉を1食10人前を平らげる。
酒もジュースも甘い物も取らない。昨年11月。幼少期から好物だったショートケーキを購入した。「かんで、そしゃくして、全部吐いた」。イチゴは口に入れず、スポンジとクリームの甘みをわずかに感じ、甘い物との決別を誓った。今年唯一、口に入れた甘い物は寺で手渡されたクリ。「バチが当たりそうで」と、吐き出さなかった。「米も長くかむと、甘みが出る」。まるでグルメの達人だ。
新入幕で初優勝に迫るなど「令和の怪物」と呼ばれた。今は「うまくいきすぎてると分かっていた。あのままじゃ通用しなかった。ケガして落ちたけど、新入幕と比べたら心も体も強くなったのは間違いない」と冷静に振り返る。一皮むけた怪物が初優勝へと着実に迫ってゆく。【高田文太】

