プロダンスリーグ「D.LEAGUE」で熱戦を繰り広げるDリーガーの素顔に迫る連載「Dリーガーのオドリバ」第2回は、脱サラDリーガーのCyberAgent Legit地獄(24)と、会社員と二足のわらじを履くKOSE 8ROCKSのAYANE(23)による“会社員経験者対談”をお届けします。【取材・構成=大友陽平、写真・動画=山崎安昭、江口和貴】
-2人は大学の先輩、後輩だったとか
AYANE 先輩です!
地獄 それこそ、キッズの頃から(ダンス)バトルで当たったりもしてました!
AYANE 彼のチームで、キッズのためのイベントがあってそれに出たのが最初の絡みです。私は無名でしたが、彼は「DANCE@LIVE」とかでファイナルに立っているくらいすでに名前があった状態だったので、すごく緊張したのを覚えてます(笑い)。
-ダンスを始めたきっかけを教えてください
地獄 4歳の頃、家族で買い物に行った時に、有線のラジオか何かが流れていて、2歳上のお姉ちゃんと2人で、それを聞きながら踊っていたみたいで、それを親が見て、ちょっとダンスを習わせてみようと思ったみたいで。親も、マイケル・ジャクソンとかビートルズとか洋楽が好きで、それで近くのスタジオにお姉ちゃんと一緒に入れられたのがきっかけです。その時はヒップホップをやっていました。
-中高時代は
地獄 中学までは「DANCE@LIVE」に挑戦したりしていたんですけど、その後に、挫折じゃないですけど、ダンスからちょっと離れた時期がありました。
-再開したきっかけは?
地獄 大学に入った時にサークルの方に誘ってもらって、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のショーにレギュラーで出させてもらったんです。仕事ながらダンスをやって、やっぱり楽しいなと。4年間ずっとやってました。
-卒業後に就職
地獄 新卒という切符じゃないんですけど、20数年間ダンスしかしてこなくて、ビジネスにも興味があったので、1回卒業したタイミングで、親も安心するし、就職しました。関西の中小企業の機械メーカーで、広告代理店的なこともやっていて、販促のお手伝いをする営業をやってました。
-AYANEさんがダンスを始めたきっかけは?
AYANE 最初のきっかけは、スポーツクラブの中のスイミングスクールに通っていて、そこでキッズエクササイズみたいなクラスがあって、記憶にないんですけど踊りたいと自分から言ったみたいで、そこに入り始めたのが体を動かすというきっかけでした。同時進行で、小学2年生から6年生までは、トランポリン選手やってたんです…(笑い)。競技でくるくる回ったりとかをやっていたので、私が通っていたクラブに、ブレイキンの人たちがアクロバットの練習をしたいというので来ていたんです。ダンスを同時進行でやってたので、私もやっているという話になって。一緒にショーに出ようみたいな流れになりました。つながった人たちがソロバトルに出るというので、初めてバトルを見に行ったんです。当時はBボーイはたくさんいたんですけど、Bガールは少なかったんです。見に行った大会で、Bガールを見られると思わなくて、すごい衝撃が走って…。女の人でもこんな回れるの? って衝撃を受けて。もともと性格上、ワーッて感じでもあったので(笑い)。バトルという文化にもひかれましたし、男の人に負けないぐらいかっこよく踊ってるその姿というのに衝撃を受けて、私も本気でやりたいと、そこからレッスンに通って、ブレイキンにハマッていきました。弟のShigekixも、私を見てブレイキンを始めて、自分たちで大会に出るようになったのが、私が中2とか中3くらいの時です。
-トランポリンをやっていた経験は生きた?
AYANE それが私、めちゃくちゃ運動神経が悪くて…(笑い)。ジャンプも低いですし、ブレイキンにプラスになってるかと言われると正直その感覚はないんですけど…。ただ、体を動かすのは好きなので、そこはブレイキンにつながったのかなと思います。
-Dリーグができると聞いて
地獄 おもしろそう! って思いました。大手の企業さんが1つずつのチームについて、あの規模でやるというのを聞いて、シンプルに「なんかおもしろそう!」という印象でした。大学を卒業して、ビジネスマンとして1年やってみて、マナーだったり、考え方とかで物事の進め方とかすごく勉強になって「(ビジネスの世界も)すごいな」と思いながらも、でも将来をイメージした時に、そこにいた僕が、あまりなりたい自分と重ならなくて…。自分の中でも「違うのかな?」とか「でも1年目だし、甘いのかな?」とかいろいろな人に相談しながら考えたんですけど、やっぱりこうワクワクしないというか…。楽しくないって思ってしまって、それで悩んでる時期に、こうワクワクする話が飛びこんできました。自分がワクワクする、やりたいと思えることをやった方がいいなと。若いし、やれる時にやろうと。それでやらせてくださいと言いました。
-会社員を辞めるという決断も簡単ではない
地獄 めちゃくちゃ不安はありましたね。周りの人にも、ダンスは続けるけど、ビジネスマンとしてやっていく! と言ってすぐのタイミングでもあったので。不安もありましたけど、やりたいという気持ちが強かったので「いったれ!」と決めました。周りも「やっぱりな!」という人が多かったです(笑い)
AYANE 私もDリーグができると聞いて「新しいな!」って思いました。自分の1つの目標として、プレーヤーとして自分にスポンサーについてもらうというのはありました。就職してすぐというか、上京したタイミングで話があって、さらにコロナで今、人に向けて踊るというか、オンラインバトルはありつつも、パフォーマンスできる場所があるというのは自分の中ででかくて。「何を目標にしたらいいんだろう?」って、イベントもないし、海外にも行けないし、このまま仕事漬けになるんだろうなという時に話が来たので、現場で踊れるのは大きいなと思いました。
-チームに入るきっかけは?
AYANE ディレクターのISSEIから誘いを受けました。ISSEIもキッズの時からお互いを高め合ってきたライバルみたいな存在で…って、ライバルというのはおこがましいんですけど(苦笑い)。同い年で、ブレイキンでずっと高め合ってきて、そんな彼が自分という人材を欲してくれたので、これは出たいと思いました。
-どんな1日を過ごしている?
地獄 基本的には練習メインです。あとは自分のレッスンをやらせてもらっているところがあるので。空いた時間に単発のお仕事だったり、東京にもダンスの仲間がいるので一緒に練習したり、ダンスが8~9割占めている生活です。
AYANE 平日は午前9時15分から午後6時15分まで、フツーに働いています。業務内容に関しては特別扱いされず、お構いなく予算も振ってきますし(笑い)。輸入雑貨の卸の営業をやっています。ダンスのお仕事があった場合は、会社も協力的で、すごくサポートしてくれていて…。自社のショールームにブレイキンを踊れるようにシートを敷いてくれたり…。仕事終わりにそのまま練習できるような環境をつくってくれるくらい、活動もサポートしてくれています。
地獄 すごいね! 1年目の大変さって僕も分かるので…。右も左も分からなくて、それで一杯一杯な中でDリーガーもやっているのは…すごいですね! 慣れて3~4年で、仕事が分かってきているのとはわけが違いますし、大阪から東京に来て慣れない環境というのもありますし…すごいですよ…。
AYANE 思っていたよりはできている…のかな。もちろん会社の協力とか、チームにもそれに合わせて練習を組んでもらっているので、私1人の力ではないんですけど、「できることは全力で!」というのが自分のモットーなので、それで頑張っています。
-開幕してからを振り返って
地獄 楽しいですし、ありがたいです。スポンサーさんやサプライヤーさんとか、いろいろな方が協力してくれています。それに、Dリーグがなかったら出会えなかった人や、できなかった経験を、始まって間もないですけどめちゃくちゃさせていただいていてうれしいですし、より頑張りたいと思っています。配信もいろいろな人が見てくれていて、普段連絡が来なかった人からも「かっこいいね!」「頑張ってるね」とくれるのでうれしいですし、だからこそもっと頑張らないとと思います。Legitは、今まで知っていたメンバーではありますけど、今回のために集められたチームで、今までやってきたこととは全然違いますし、年齢も僕が24歳で、最年少が17歳なので、コミュニケーションの仕方も違いますし、ぶつかる時もありますけど、その中で学びもあって、いろいろな経験をギュッとさせてもらっています。
AYANE 私たちはブレイキンのBボーイ、Bガールチームですが、ブレイキンの文化は基本「バトル」なので、ショーケースとかコンテストの出場経験がほとんどない中での戦いなので、とにかく頭を働かせながら、いかに自分たちらしく、どう見せるかという部分で頑張っています。あとこれまでバトル文化でやってきたもんですから…。ショーメインでやっていた方と会う機会もほとんどなかったんですけど、例えばavex ROYALBRATSのみんなとも、同じダンス界にいるのにこれまで全然絡むこともなかったです。Legitはバトルに出ていたメンバーも多いので個人的に知っていたんですけど、今まで出会わなかったチームばかりなので、つながりが広がってうれしいんです。人と話すのがめちゃくちゃ好きで…。ROUND当日は、1人でわちゃわちゃしています(笑い)
地獄 本当に楽しそうなんですよ(笑い)
-お互いのチームはどう見ているか?
地獄 僕はBボーイの動画を見るのが好きなんです。そのメンバーが集まっていて、レベルの高いことを“さらさらさら~”ってやっているので、本当にすげえ! って。しかもDリーグの中でいろいろなコンセプトを混ぜてきていて…。めちゃくちゃ好きなチームです!
AYANE ありがとうございます! Legitはいろいろなジャンルのダンサーが集まっているチームです。バトルで一緒の大会に出たり、しかも結果を残していたり、それぞれのジャンルのトップが集まっている印象です。1つのショーをするので、例えばロックが苦手な人もいると思うんですけど、それでも魅せられるのはすごいと思います。自分もDリーガーということを忘れるくらい、他のチームも見ているんですけど、そんな中で楽しめるショーを持ってくるし、しかもスキルもあるので、いろいろなことができるチームだなと思います。
-チームの今後の目標は?
AYANE 総合5位ですが、4位の中に入って次にいきたいです。もちろん各ROUNDでの優勝も狙っているんですけど、最終地点でとりたいというのがあります。自分たちもROUNDを振り返って課題があって、試行錯誤しながらですが、最終的に「よっしゃー!」って言えるように頑張っていきたいです。ROUND.6は、ブレイキン要素が詰まりきった作品になっているので、楽しみにしていただきたいです。
地獄 総合8位なので、上を目指していきますし、毎回優勝を狙っている中で結果がついてきてないのですが、逆に言うと巻き返すストーリーしかないと思います。いろいろな角度にチャレンジしていますが、ROUND.6でもチャレンジがあるので、楽しみにしていただければと思います。4位以内に入りたいですし、笑って終わりたいので、FISH(BOY)さんを筆頭に頑張っていきます。勝ちたい!
-個人の目標は?
AYANE 今の仕事をすぐ辞めたいとは思っていないですし、でもずっと続けようとは思っていないというか、どこかタイミングがあるのかなと思っているんですけど、ダンス1本でやっていきたいという時に、仕事の経験もいかしてやっていきたいというのが目標です。ダンサーとして世界を回りたいというのが個人的にもあるので、ビジネスのノウハウとか、ブランディングにもつながっていくと思うので、いつかはダンス一本に絞ってやっていきたいです。
-ブレイキンはパリオリンピック(五輪)から正式種目になった
AYANE もちろん五輪は目標の1つです。ブレイキンが選ばれて、Bボーイ、Bガールは特別な環境をもらったので大事にしたいです。パリ五輪の時は28歳くらいですが、この3年でもたくさんのことが起こると思うので、自分を保ちながら、目指していきたいと思います。
地獄 Dリーグでもっと活躍するというのはもちろんなんですけど、僕はダンス以外にも、エンターテインメントという目線で、演技とか舞台に立ったりとか、しゃべりとか幅広いことをやっていきたいんです。経験を積んで総合的にいろいろな人を魅了したいですし、かっこいい人になりたいので、いろいろな挑戦をしていきたいです。あとは、ストリートパフォーマンスとか、日本では他の国に比べると距離があります。09年にニューヨークに行った時に、セントラルパークでいろいろな人がやっていて、衝撃を受けました。日本でももっと距離を詰められれば、Dリーグを見てくれる人ももっと増えると思います。生きているうちにちょっとでもそんな社会に近づけるように、プラスになる活動をやっていきたいです。あとは…いいお父さんとおじいちゃんになることです(笑い)
○…「地獄」というダンサーとしての名前は、10歳の頃に当時通っていたダンススタジオの師匠に名付けられたという。
地獄 本名は「しょう」っていうんですけど、ダンスバトルにエントリーする時に、すでに「Show」という人がいて…。師匠のところに行って「すでにShowがいる」って聞いたら、「地獄でいこう!」ってなって…。それが地獄の始まりですね! かれこれ地獄歴14年です(笑い)
AYANE 最初知った時は「地獄て」って(笑い)。スキルもすごかったので、ダブルインパクトがありましたね!
中高生時代は、「Show」という名前で活動もしていたというが「改めて就職とか、自分を振り返るタイミングもあって、それはそれで自分だから自信を持っていこうと思って戻しました。一度聞いたら忘れないですし、今は『地獄』で良かったと思っています(笑い)」。
◆地獄(じごく)1996年(平8)7月25日、大阪府生まれ。4歳の頃、両親の勧めでダンスを始め、POPを中心にさまざまなジャンルを経験。国内外のダンスイベントやテレビ出演、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどでダンサーとして活躍。170センチ。
◆AYANE(アヤネ)1997年(平9)11月26日、北海道生まれ、大阪育ち。10歳でブレイキンと出会い、若手ブレイキンクルー「K.A.K.B.」などに所属。15~16年に世界大会連覇の経験も。実弟のShigekixもブレイキンで活躍中。153センチ。
◆ROUND.5(3月3日)ハイライト 第1戦は6位、第2、3戦は7位、第4戦は8位と下位に低迷していたSEPTENI RAPTURESが「ネオソウル」をテーマに“男の色気”を表現し初勝利を飾った。総合順位はavex ROYALBRATSが首位をキープ。勝ち点2差でSEGA SAMMY LUXが追う。22日開催のROUND.6では、ゲスト審査員を津軽三味線奏者の吉田健一、Yuko Sumida Jacksonが務め、ゲストアーティストには、JP THE WAVYが登場する。