先週はジャニーズのタレントが主演する舞台を続けて見ました。6人組の美 少年が主演する新橋演舞場「少年たち」、堂本光一が主演する帝劇のミュージカル「チャーリーとチョコレート工場」、そして、東山紀之主演のパルコ劇場「チョコレートドーナツ」。ジャニーズは逆風の中にあるけれど、いずれの劇場も客席は満員でした。
特に印象的だったのは東山の「チョコレートドーナツ」です。新会社の社長に就任するため、今年いっぱいで芸能界から引退する東山にとって最後の舞台になるからです。
東山演じるショーパブのダンサー、ルディが育児放棄されたダウン症の少年を養子に迎えようと、差別や偏見の壁と闘う姿を描いた舞台で、3年前に初演されましたが、コロナ禍のため予定の半分ほどの日程しか公演はできませんでした。 そのリベンジとなる再演ですが、稽古前にジャニー喜多川氏の性加害問題で大揺れの「ジャニーズ」を背負う役回りを担うことになり、性被害者への対応、記者会見で矢面に立つなど、十分な形で本番に臨めない状況だったはずです。
公演パンフレットでも、演出の宮本亞門氏は「上演が危ぶまれ、不安の日々が続きました」と振り返っていましたが、出演者一同が揃う顔合わせの場で、東山の「最後の舞台でこの作品に取り組めることが光栄です」という言葉に背中を押されたそうです。
舞台の東山ははつらつとしていました。ショーパブのシーンでは女装で華やかに踊り、ラストにはボブ・ディラン作詞・作曲の「アイ・シャル・ビー・リリースト」を歌い上げます。東山は公演パンフレットで「僕のルディの集大成としてエネルギーを出し切るつもり」と話していますが、本来なら再演を重ねてより練り上げたい役柄、舞台のはずです。
この「集大成」という言葉の裏に、あまりにも早く、この舞台から去らざるを得ない東山の悔しさを感じます。東京公演を経て、大千秋楽は11月23日の愛知公演。パンフレットには「目に焼き付けていただけたら幸いです」という言葉もありました。1985年のデビューから多くのファンから愛されてきた1人のエンターテイナーが静かに舞台から去っていきます。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)




