大阪のシンボル・通天閣(大阪市浪速区)の体験型の新アトラクション「TOWER SLIDER(タワースライダー)」がゴールデンウイーク(GW)明けの9日にオープンします。

多くの集客が期待できるGWに新アトラクションをスタートしなかったワケがあります。「誕生秘話」とともに運営会社「通天閣観光」の高井隆光社長(47)に聞きました。

「コロナ禍がなかったら、思いつかなかったでしょうね」。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で通天閣も大打撃を受けました。これまで観光シーズンは、1日の入場者が3000人を下回ったことはありませんでしたが、約30人まで激減した日もありました。

民間企業ですが、大阪府の「コロナ対策」にも協力してきました。吉村洋文知事(46)の要請を受け、府の新型コロナウイルスの感染状況の独自基準「大阪モデル」を府民に知らせるために「赤色」などにライトアップしました。

「通天閣も新世界も瀕死(ひんし)の重傷というか、死んでました」という高井社長は、コロナ禍で逆転の発想をしました。

「ピンチはチャンス。何か“ショック”を与えるような斬新なものを…」。そこで思いついたのが通天閣3階の地上22メートルの入り口から出口の地下1階まで全長60メートルの滑り台でした。「暇な時の通天閣だからこそ、工事もスムーズにできる」との確信もありました。

コロナ禍でトレンドとなった「体験・体感」もヒントにしました。今回の総工費は約3億円。

「通天閣が新しいものをどんどん発信し、元気でなければ、新世界も大阪も元気にならない。他では発想しないようなことをやりたかった」

1912年(大元)に開業した初代通天閣が火災で焼失し、現在の2代目通天閣は1956年(昭31)、通天閣が消えて寂しくなった新世界を復興しようと地元住民が再建にこぎつけました。

「大阪城などは古きよきものを守って後世に伝えていく。みんなの思いで建てられた通天閣は、いつまでも大阪のシンボルであるために時代の変化に対応していきたい」

コロナ禍で生活様式も変わりました。攻めの一手を放つ高井社長は言います。「変化に対応するか、しないか。通天閣は時代とともに変化します。これが通天閣の生きる道です」。

新アトラクションはGW前に完成しましたが、吉村知事がGW期間中、新型コロナウイルスの感染拡大に「気を引き締めて」という言葉もあり、あえてGWを外したそうです。

コロナ禍をチャンスととらえ、完成した「異世界トンネル」。新世界に“絶叫”が響きます。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)