後半に突入した冬ドラマ。今期はせりふに聞き応えのある“雄弁男子”が豊作で、キャラクター性の異なるカラフルな名言ワールドが充実している。「ミステリと言う勿れ」「恋せぬふたり」「おいハンサム!!」の主人公3人の、印象に残るせりふをメモしてみた。

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月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」(C)フジテレビ
月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」(C)フジテレビ

【ミステリと言う勿れ】(フジテレビ月曜9時)/久能整(菅田将暉)…大学生。教養に裏付けられた独自の視点から、世の中の常識や思い込みを次々と覆していく新感覚ミステリーの主人公。

◆「真実はひとつなんかじゃないですよ」(1話)

真実はひとつだと言う刑事に心底驚いて「そうですか?」「本当に?」。AとBが階段でぶつかるたとえ話から「真実は人の数だけある」を立証し、「でも“事実”はひとつです。警察が調べるべきはそこです」までのロジックがあざやかだった。

◆「男のロマン至上主義の人たちに交ざれないって困っているんでしょうけど、至上でもなんでもないんで。あなたは違う生き物なんだから、違う生き物でいてください」

権力サイドにいる人は徒党を組むとし、「そこに女の人が1人交ざっていると、おじさんたちはやりにくいんですよ」の視点。

◆「したことも、しなかったことも、いずれ自分に返ってくるだけですから。子どもがお父さんにかまってほしくてグレましたなんて、ドラマの中のだけのことですよ。実際は、ただただ無関心になっていくだけです」

子どもの成長に立ち会うことを権利と考えるメジャーリーガーと、義務だと思う日本の解説者の対比から始まる意識の溝になるほど感。

◆「罰則はありますけど、人を殺しちゃいけないって法律はないです」

社会の秩序について。「あなたは水泳大会にやってきて、棒高跳びがしたいと言っているようなもの。大変迷惑なんです」という指摘に、「みんながルールを守って楽しんでいるそのプールで、わざわざ棒高跳びをしたいのが殺人鬼なんだよ」と返した犯人。

◆「日本は(欧米の)逆です。いじめられている子に逃げ場を作って、なんとかしようとする。でも逃げると学校にも行けなくなって、損ばかりすることになる。病んでたり、迷惑だったり、恥ずかしくて問題があるのは加害者の方なのに」

ほんと、それ。

よるドラ「恋せぬふたり」(C)NHK
よるドラ「恋せぬふたり」(C)NHK

【恋せぬふたり】(NHK月曜午後10時45分)/高橋羽(高橋一生)…スーパーの青果店売り場店員。他者に恋愛感情を抱かず、性的にひかれない「アロマンティック・アセクシャル」のキャラクター。

◆「なんでこういう時って、こういう人間もいる、こういうこともあるって話終わらないんですかね」

男女は恋愛するもの、家族とはこういうものと価値観を押しつけてくる多数派の大騒ぎをだまらせたひと言。

◆「僕たちみたいな存在を理解するどころか認知もせずに多数の意見を正しいと押し付けてくる家族最高信者や恋愛至上主義や私の言うことは絶対と言う親。全部ポイですポイ」

◆「家族を美化しすぎだと思いますよ。でも僕たちの関係を表す言葉が他に見当たらないですし。強いて言えば味方かなと」

◆「愛のないセックスは理解できて、セックスのない愛は理解できないんですか」

土ドラ「おいハンサム!!」(C)フジテレビ
土ドラ「おいハンサム!!」(C)フジテレビ

【おいハンサム!!】(フジテレビ土曜11時40分)/伊藤源太郎(吉田鋼太郎)…昭和の頑固おやじの生き残り。主に「食」がらみで家族や社員にハンサム哲学を伝授する。

◆「この店は道に迷っている時にたまたま見つけたんだ。自分の勘だけを頼りに思い切って飛び込んでみる。そういう見つけ方があるんだよ。当たり外れがあるから面白いんじゃないか。間違いのない選択なんてないんだよ。だからちゃんと迷う。迷って選ぶ。人生その連続だ。迷っていいんだよ」

ネットの評価で店選びをする部下たちへの説教だったが、男選びで迷っていた隣の女性客に響いてお礼を言われるほっこりシーン。

◆「ネギをちょうど使いきるなんてことはできないんだ。限られた時間のせいで、必ず生かしきれなかったものが残ってしまう。人生には必ず終わりがくる。やり残したことを後悔しても始まらないんだよ。ぴったりがなんだ。やり残しを恐れずに前向きに生きろ。やり残してこその人生だ」

冷蔵庫に残った7センチのネギを発端に、人生について茶の間で2分間の大演説。

◆「誰にも欠点や変なところがある。いい変、悪い変、治る変、治らない変。治さない、むしろ大切にしておきたい変。こんな人だろうっていう先入観や、こんな人であってほしいと言う願望にとらわれることなく、欠点や変さがどういうものなのか、ちゃんと見極めろ」

レモンや牛丼、焼き肉に投影される人格論から話が飛び、仁王立ちで人生を語る。

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このところ、ドラマの直言キャラはKYや鉄仮面などの奇人設定を借りて言葉を発することが多かった印象だが、この3キャラはそのタイプではない。自己主張や意思表示を怠らないだけで、むしろ周りに自然と人が寄ってくる愛されキャラだったりする。一方通行ではない他者との会話のやりとりにリアルな輝きがあるのだ。冬ドラマも後半戦。ジャンル多彩な作品群から、どんな言葉や名言に出会えるか期待したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)