宝塚歌劇団は5日、星組トップ紅(くれない)ゆずると、トップ娘役綺咲愛里(きさき・あいり)が10月13日付で同時退団することを発表した。紅は6日午前に大阪市内で、綺咲も同日午後、兵庫県宝塚市内で退団会見を行う。

トップと、トップ娘役が同時に退団を発表するのは、16年11月に会見した前雪組トップコンビの早霧せいな・咲妃みゆ以来。男役優位の劇団にあって、同日の発表、会見は異例だったが、星組コンビも「ちぎみゆ」コンビに続いた形。

紅主演の星組本拠地作「霧深きエルベのほとり」「ESTRELLAS~星たち~」は、前日4日に宝塚大劇場で千秋楽。口は悪いが情に厚い主人公を好演し、15日からは東京宝塚劇場公演の開幕を控えている。

5組最上級生トップの紅は、173センチの身長を生かしたスタイリッシュな立ち姿と、綿密な役作りに加えて大阪出身らしい軽快な芝居運び、達者なトークと、多彩な顔でファンを魅了。テレビ朝日系「徹子の部屋」や、一昨年は「ドリームジャンボ宝くじ」のテレビCMに出演するなど、宝塚歌劇を一般に広める“広報活動”にも貢献した。

サヨナラ公演は「ミュージカル・フルコース『GOD OF STARS-食聖-』」「スペース・レビュー・ファンタジア『エクレール・ブリアン』」。兵庫・宝塚劇場で7月12日に開幕し、東京宝塚劇場で10月13日に千秋楽。同公演をもっての退団となる。

紅は02年入団。星組に配属され、以来、星組一筋。トップ在位6年を超え「レジェンド」とも呼ばれた同じ大阪出身の元トップ柚希礼音(ゆずき・れおん)らを支えてきた。

前星組トップ北翔海莉(ほくしょう・かいり)からバトンを受け、16年11月に星組トップ就任。新人公演初主演の思い出作「スカーレット・ピンパーネル」が本拠地お披露目だった。

昨春は落語「地獄八景亡者戯」をもとにした異色ミュージカルに主演するなど、お笑い好きらしく、紅にしか出せない個性を発揮。宝塚歌劇の台湾公演には第1回に続き、昨秋の第3回公演は主演で凱旋(がいせん)した。

サヨナラ公演は、そんな紅のキャリアを生かした内容になる。芝居は小柳奈穂子氏の演出で、上海の総合料理チェーン「大金星(グランド・ゴールデン・スター)グループ」が舞台。上海、マカオ、シンガポール、ドバイなど、アジア各地が登場する“アジアン・クッキング・コメディー”。

一方のショーは、ベテラン酒井澄夫氏の作・演出で、宝塚王道のクラシカルな魅力も持つ紅が、世界各地を舞台に歌い踊る様を表現する作品になる。

綺咲は10年入団。星組に配属され、12年に紅主演作「ジャン・ルイ・ファージョン」で、紅の妻役に抜てきされた。兵庫県出身で、紅とは“関西コンビ”。新人公演でもヒロインを複数回務め、16年から「ヒガシマル醤油」のイメージキャラクター。同11月、紅のトップ就任と同時に相手娘役に迎えられた。