英王室幹部が自身の黒人への差別的発言を受けて辞職に追い込まれた騒動が、現在米国を訪問中のウィリアム皇太子夫妻の外遊に暗い影を落とす恐れが出ている。

皇太子夫妻は、2日に米ボストンで開催される自身が設立した環境賞「アースショット賞」の授賞式に出席するため、先月30日から3日間の日程で米国を訪問している。エリザベス女王の死去を受けて王位継承順位で1位になって初となる外遊だけに、バイデン大統領夫妻との会見なども組み込まれるなど、大きな注目を集めていた。

しかし、夫妻が8年ぶりとなる米国訪問をスタートさせたタイミングで、王室内で組織的な人種差別が存在していたことが発覚し、英メディアは一斉にこの問題を大々的に報じた。

報道によると、カミラ王妃がバッキンガム宮殿で同29日に開催したレセプションに招待された黒人ゲストが、王室幹部の貴族女性から人種差別を受けたとツイッターで告発し、翌日に発言の主とされるスーザン・ハッシー夫人(83)が辞任した。夫人は、今年9月に死去したエリザベス女王の側近を長年務め、その後も引き続き王室の要職に就いていた人物で、皇太子のゴッドマザー(代母=洗礼式の証人)としても知られる。

夫人はゲストに対して「本当の出身地はどこか」と執拗(しつよう)に尋ねたといい、告発を受けた翌日に王室での役職から辞任した。この問題が世間の注目を集めたことで、英国内での皇太子夫妻の外遊報道が減り、かすんでしまったと米メディアは伝えている。また、この一件を受けて同じく王室内で過去に人種差別的発言を受けたと主張して物議を醸していた弟ヘンリー王子の妻メーガン妃の主張が「実は正しかった」と擁護する声も出ており、ネットには王室の差別体質が証明されたとの書き込みもある。

皇太子夫妻の報道官は「人種差別は私たちの社会に存在する場所はありません。容認できるものではない」とコメントを発表したが、メーガン妃の告発を受けて多様性の改善に取り組んでいた王室に対する風当たりが再び強まっている。ヘンリー王子夫妻が制作したネットフリックスのドキュメンタリーも近々配信予定で、この一件で国民からの王室への批判が噴出する可能性も取りざたされている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)