異色のゾンビ映画「28年後…」が公開中だ。
人々を凶暴化(ゾンビ化)させるウイルスがまん延して28日後を描いた「28日後…」(02年)に始まり、「28週後…」(07年)へと続いたシリーズの第3作である。
1作目で発生場所のロンドンは壊滅状態となり、2作目では英国全土の封鎖から欧州大陸へと世界規模の拡散が示唆された。
そして第3作では、欧州大陸の各国はウイルス鎮圧に成功、文明が崩壊した英国だけが「隔離地帯」となっている。「トレインスポッテイング」(96年)や「ミリオンズ」(04年)など、独特の角度から英国社会を描いてきたダニー・ボイル監督だから、今回もゾンビ映画の枠に納まらないシニカルな視点が光っている。
6月19日にはロンドンでワールドプレミアが開催され、ボイル監督は「ホラー映画に遊び心を加えることができたら、素晴らしい映画になります」と語った。そして、監督とともに構想を練った脚本のアレックス・ガーランド氏は「英国にはまん延しても他の国にはウイルスは広がらなかったという設定は、ある意味現実の世界政治を反映しています。限られた地域で文明が崩壊し、弱肉強食の構図が展開しても、その影響を受けない人々は、まるでそんなことがなかったかのように日常生活を営んでいますから」という。
ニュースで目にする紛争地帯の悲惨な状況と、自分の日常生活を嫌でも考えさせられる。
劇中で、12歳の少年スパイクが暮らすのは北東部沿岸にある総面積4キロのホリー島だ。英国本土とは干潮時にしか現れない1本の道でつながったこの島でウイルスを逃れた人々がコミュニティーを築いている。
畑作や放牧で食料は自給しているが、生活用品や農具は危険を冒して本土から調達している。島生まれで、パンデミックを知らないスパイクにも、本土の視察と物資調達の任務に就く日が巡ってくる。
28年間で感染者(ソンビ)も進化している。ゆっくりと地面をはいながら地中の生物を食む種族や一定の知性と走力を備えた種族、そして2メートルを超える巨体の怪力ゾンビもいた。
父ジェイミーに連れられて目にする初めての世界。鍛錬を重ねたとはいえ、弓矢だけが武器の死と隣り合わせのスリリングな任務が最初の見どころだ。
スパイクの目を通して、恐怖が伝わってくる。進化形ゾンビの造形に息をのみ、植物が文明をのみ込んだデストピア世界にリアリティーがある。
本土で感染者たちと「共生」する謎の医師ケルソン役に名優レイフ・ファインズがふんしていて、彼が築いたガイコツの巨大なオブジェとともに、マーロン・ブランドが演じた「地獄の黙示録」のカーツ大佐をほうふつとさせる。
詳述は避けるが、映画はこのケルソンの登場から謎めいた展開となり、続編を予感させる。
日→週→年と来て次は? 「28年後の28日後…」とでもなるのだろうか。【相原斎】



