【今週の言葉】「ラジオというメディアは『いつも通り』というところが、巣ごもり中のリスナーの皆さまの心強い相棒となれたのでは」

ニッポン放送檜原麻希社長が13日の定例会見(オンライン)で語った言葉です。放送業界全体として厳しい営業状況が続きますが、一方で「リスナーは大きく増えた実感がある」と手応えも語りました。

昨年は開幕戦延期でプロ野球中継ができない時期もありましたが、それ以外は「いつも通り」のレギュラー編成を続けてきました。アクリル板やマウスガード、リモート画面の混在など見た目にしんどいテレビと違い、「音声だからリモートでも違和感がないというのが大きい」。報道機関としてコロナの最新情報を伝える一方、「通常番組で楽しい時は楽しく、というところが、長期間にわたるコロナ禍で支持された実感がある」と話しています。

実際、リスナー増は数字にも表れていて、最初の緊急事態宣言下で在宅率が高くなった昨年4月20日の週には、首都圏民放5局の週別平均聴取人数(1分あたり)が約90万人でピークに達しています(ビデオリサーチ調べ)。スマホでラジオを聴けるradiko(ラジコ)のユーザー数も、コロナ前の昨年2月は約750万人でしたが、現在は900万人超。ポッドキャストなどの音声コンテンツ配信も活況です。

最初の緊急事態宣言が発布された昨年4月以降、ラジオ周りのエンタメニュースも多くなってきたように感じます。石田純一さんが感染、入院した際には文化放送のレギュラー番組が経過発信の場になりましたし、渡部建さんの不倫騒動では、本人の出演の有無や、相方の児島一哉さんが何を語るかなど毎週J-WAVEが激アツに。岡村隆史さんのように、女性蔑視発言の謝罪も、自らの結婚発表もオールナイトニッポンで行った例など、発表や初コメントをラジオで行うタレントも増えています。

テレビが非日常の光景で落ち着かない中、リモートでも遜色なく「いつも通り」を実現できるラジオは、タレントにとっても頼もしい場です。発信の拠点として、ファンとの接点として、売れているタレントほどラジオを手放さないもの。多くが生放送という環境で、音だけを頼りにパーソナリティーとリスナーが1対1でつながっているようなアナログ感覚も今の時代に効きそうで、「心強い相棒」という檜原氏の発言にいろいろ納得できるのです。

ちなみに、見えていないだけで、ラジオ放送も感染対策は徹底的に行っています。どの局もリモートやスタジオ分けを活用しながらブース内の人数を大幅に絞り、アクリル板や、低濃度オゾン発生器などを使ったスタジオの消毒もマストです。ニッポン放送の場合、このほど「光媒体コーティング」なる抗菌・除菌も強化させ、「いつもの時間に、いつもの声を」に万全を期しています。

コロナ禍は続きますが、檜原社長は「変化を恐れず、新しい風を」。ラジオの復権に注目です。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)