<坂口正大元調教師のG1解説>

安田記念を制したソングライン(撮影・柴田隆二)
安田記念を制したソングライン(撮影・柴田隆二)

競馬では基本的に外枠は不利です。ところが、ときに有利に働くこともあります。その1例が今回でしょう。前半の800メートル通過は46秒7。G1のマイル戦としてはかなりのスローペースです。こうなると馬群はだんごになり、最後は瞬発力勝負。いわゆる“よーいドンの競馬”です。

多少の距離ロスがあっても、外からスムーズにしまいの脚を使った方がいい結果になります。7枠13番ソングラインがまさにそうでした。一方で、馬群の中で前が壁になり、不完全燃焼に終わった馬もいました。

好スタートを決めたソングの池添騎手はジワッと位置を下げながら、すでに“遅い”と判断していたと思います。先行した3~4頭がけん制し合い、意外に行かなかったからです。内には入れず、枠なりに外を走らせる選択をします。4コーナーもかなり外を回りましたが、前が壁になることは1度もなく、上がりは32秒9。この瞬発力を引き出したことが勝因でした。

4回るコーナーを安田記念を制したソングライン(左端)(JRA提供)
4回るコーナーを安田記念を制したソングライン(左端)(JRA提供)

道中ですぐ後ろにいたシュネルマイスターが、馬群の中で進路が開くのを待ったのとは対照的でした。そのシュネルはそれでも上がりは同じ32秒9。ですが、外枠から外を通っていればもっと切れたかもしれません。最後は首差ですから、進路が明暗を分けました。

池添騎手は私が管理したデュランダルをはじめ、ドリームジャーニー、オルフェーヴルの兄弟など、切れる脚を持つ一方で難しさもある馬を数々、乗りこなしてきました。ペース判断、位置取り、進路取り。経験を生かし、ソングの特性も熟知した上でのパーフェクトな騎乗でした。

2着シュネルは昨秋に国内で走った時と比べてプラス10キロ。ほとんどが成長分だと思いますし、腹回りがボテッと見えたのは体形です。帰国初戦でも仕上がりは良かったと思います。

3着サリオスは22キロ減に驚きましたが、これくらいの体の方が動ける印象です。レーン騎手とも手が合うのでしょう。行きっぷりが良かったですし、外枠からスムーズでした。(JRA元調教師)

手前から安田記念を制したソングライン、3着サリオス、2着シュネルマイスター(撮影・酒井清司)
手前から安田記念を制したソングライン、3着サリオス、2着シュネルマイスター(撮影・酒井清司)