26年ミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)のフィギュアスケート女子は、世界女王アリサ・リュウ(20=米国)が、逆転で初の金メダルに輝いた。フリー1位の150・20点で、合計226・79点。坂本花織(25=シスメックス)を1・89点差でかわして頂点に立った。
今、米国フィギュア界では、アジア系選手の活躍が顕著だ。今大会で優勝したリュウだけではなく、22年北京大会は男女シングルに出場した6人中4人がアジア系だった。同大会を制したネイサン・チェンもその代表例だ。
全米人口の約6~7%に過ぎないアジア系米国人が、なぜ氷上で存在感を際立たせているのか。そこには地理、家庭環境、競技特性、大きな大会での成功例などが背景にある。
まず第1の理由に、地域的な背景がある。米国フィギュアの主要拠点はカリフォルニア州やテキサス州に集中している。多数の通年リンクがあり、有力コーチが集まる地域だが、いずれもアジア系人口が多いエリアと重なる。特にカリフォルニア州は国内で最もアジア系住民が多く、全米の約3分の1が居住する。
リュウはカリフォルニア州のオークランド出身。中国出身で89年の天安門事件で亡命した父に、地元のスケートセンターに連れて行かれたことが競技を始めたきっかけだった。中国にルーツを持つチェンは幼少期に南カリフォルニアに移住しており、長年世界の第一線で戦った香港系のミシェル・クワンはロサンゼルス近郊のリンクから羽ばたいた。両親が日本人で18年平昌五輪代表の長洲未来もカリフォルニア生まれ。競技環境と人口構成が、アジア系の活躍の幅を広げた。
経済的要素も大きい。フィギュアはスポーツ屈指の高コスト競技で、レッスン料や振り付け費、衣装代、遠征費などで年間3万5000ドル(約543万円)を超える支出が一般的とされる。リュウらトップ選手の衣装代は8000ドル(約124万円)に達するという。米統計によると、アジア系世帯の中央値所得は全体平均を上回り、教育や習い事への投資を重視する思考が根強い。幼少期からの長期育成が実を結ぶケースが多いといえる。
競技特性もアジア系に適合しやすい。フィギュアは他競技に比べ、体格差で優劣がつきにくく、欧米人に比べて小柄な体型も、ジャンプなどで優位に働きやすい。運動神経よりも反復練習による技術習得が重要となる競技で、計画的な練習管理と継続力が成果に直結する。この点も、教育重視の家庭文化との親和性は高いといえるだろう。
リーダーの存在も、希望を与えてきた。92年にアルベールビル大会で金メダルを獲得した日系3世のクリスティー・ヤマグチは、アジア系コミュニティーに大きな可能性を示した。98年長野大会、02年ソルトレーク大会で2大会連続で五輪表彰台に立ったクワンも同様だ。その後、チェンが北京で金メダルを獲得。フィギュアは、世代を超えてアジア系のアイデンティティーを支えるスポーツとなっている。
もっとも、人口比を大きく超えているわけではなく、トップ層に成功例が集中することで「多い」という印象が強まる側面もある。それでも、地理や家庭環境、競技特性、ロールモデルの存在など様々な要素が重なり合い、米国フィギュア界におけるアジア系の存在感を高めているのは確かだ。【勝部晃多】

