日本勢女子初出場となる1500メートル予選3組で、田中希実(21=豊田自動織機TC)が準決勝進出の快挙を成し遂げた。

自らの日本記録を2秒近く更新する4分2秒33で4着。新たな歴史を刻み「まずは準決勝に行くところが関門と思っていた。不完全燃焼ではなく、今ある力をしっかり出せた」と充実感がにじんだ。

恐れることなく攻めた。レース前、競技場内の五輪マークを見て、気持ちが高ぶった。号砲を聞き「1番を目指すぐらいじゃないと、準決勝には進めない。最初の100メートルでちゅうちょしないように」と内側から先頭に出た。残り1周で3番手。アフリカ勢に引っ張られながら、懸命に腕を振った。3日前の5000メートルは予選敗退し「いい意味で悔しさをぶつけようと練習してきた」と出し切った。

陸上一家に生まれながら、幼少期は五輪に意識がなかった。母千洋さん(51)は北海道マラソンで2度優勝の実績を持ち、父の健智コーチ(50)も実業団でトラック種目に打ち込んだ。田中は「昔から全然、誰が速いとか知らなかった。本当に今の自分しか見えていなかった」。小学生の頃は100メートルに20秒要し「(5歳下の)妹とほとんど変わらなかった」と振り返る。

ただ、今につながる強い思いがあった。「前を走っている子がいて、負けたら悔しかった」。その連続が自らを高めた。4日の準決勝へ「中学生の時のように…」と切り出し「気迫を最初から最後までまとわせているような、やる気の塊のようなレースができたらいい」と誓った。世界記録との差は約14秒ある、日本勢にとって厳しい種目。それでも、気持ちで負けない。

◆田中希実(たなか・のぞみ)1999年(平11)9月4日、兵庫・小野市生まれ。小野南中3年時に全国中学校大会1500メートルで優勝。西脇工高を経て、同大1年だった18年U20(20歳未満)世界選手権で3000メートル優勝。19年世界選手権5000メートル14位。7月30日の東京五輪5000メートル予選2組は自己記録14分59秒93の6着で準決勝に進めず。趣味は読書。153センチ。