男子200メートルで日本は3人とも予選敗退となった。日本歴代2位の20秒08の自己ベストを持つサニブラウン・ハキーム(22=タンブルウィードTC)は21秒41の2組6着に沈んだ。飯塚翔太(ミズノ)は21秒02の1組6着、山下潤(ANA)は20秒78の3組5着だった。日本勢は100メートルも全員予選落ちしており、世界の壁にはね返された。

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活躍が期待された日本スプリント界は、世界の前に完敗した。100メートルに続き、200メートルも全員予選落ち。みな調子のピークを東京五輪に合わせきれなかった。なぜか?

まず全体のレベルが上がったことによる“副作用”がある。5年前のリオデジャネイロ五輪前は9秒台スプリンターは0人だったが、現在は4人。6月下旬の日本選手権に完璧な仕上げで挑まねば、まず代表から落選してしまう。日本選手権は少し余力を残し、五輪は100%というプランは大きなリスクとなった。その完璧に仕上げた後、五輪は約1カ月後と迫る。日本選手権の反動も大きく、調子を維持するのは難しい。

また、リオ五輪と比べ、東京五輪は参加標準記録が引き上げられたことが背景にある。100メートルは10秒16から10秒05、200メートルは20秒50から20秒24。比較的、楽に突破できていた以前と違い、体と心をきちんと整えないと届かない数字に変わった。結果として、春から徐々にコンディションを上げ、夏に完璧とする「方程式」は最適でなくなった。参加標準記録を突破できていない選手は、シーズンイン当初の春から状態を上げることが求められた。例えば、6月6日の布勢スプリントで100メートルの日本記録9秒95で参加標準記録をクリアした山県亮太は、そこに調子の山を作る必要があった。

熾烈(しれつ)な日本選手権、そして参加標準記録を、まだ余力ある中で突破できる。世界で戦えるには、その力を養っていく必要がある。【上田悠太】