世界記録保持者で前回リオデジャネイロ五輪王者のエリウド・キプチョゲ(36=ケニア)が同種目3人目の2連覇を達成した。

2時間8分38秒で金メダル。「はだしのランナー」として知られるエチオピアのアベベ(60年ローマ、64年東京)、当時東ドイツのチェルピンスキー(76年モントリオール、80年モスクワ)以来となる同種目2連覇をつかんだ。

圧倒的な勢いでスパートをかけた。30キロ地点の給水ポイント。北海道大内構内でギアを上げ、それまでいた先頭集団を引き離した。ぐんぐん差を広げ、35キロ地点では2位集団と27秒差をつけた。金メダルをはっきりと視界に捉え、1人旅となった。そのままペースを落とさずゴール。完勝だった。

気温はスタート時で26度、競技後に28度、湿度もスタート時で80%と過酷な条件に参加106人中30人が棄権したが「天気は大丈夫だった。文句を言うことはできない。みんな同じ条件だから。私たちはみんな同じフライパンの上にいた。それが競争なんだ。みんなで走って参加できてとてもうれしい」と涼しい顔で話した。

20年8月のロンドンマラソンでは8位に沈み、東京五輪は不安視されていた。「マラソンは人生のようなものであり、人生には多くの課題がある。私はロンドンで起こったことを受け入れ、先に進んだ」。コロナ禍の中での五輪に「私たちが正しい方向に進んでいることを次世代に、そして全世界に希望を与えるために走った。WHO(世界保健機関)の制限に従うしかない。私たち全員が従えば、早く通常の生活に戻ることができる」と語った。

5000メートルで04年アテネ五輪銅メダル、08年北京五輪銀メダル。マラソン転向後は18年ベルリンマラソンで2時間1分39秒の世界記録を樹立した。そして五輪連覇。次の目標については「私は、ウサギを1匹だけ追いかけるべきだという哲学を信じている。2つを追いかけると、すべてを得ることはできない。この2年間、東京五輪に焦点を合わせてきたので、次のことを計画するのは、自分の前に大きな仕事があるときだけ。ここ東京で優勝を楽しみたいです」と話した。長く第一線で活躍するヒーローが、また新たな歴史を刻んだ。