今大会での現役引退を表明して臨んだ大迫傑(30=ナイキ)が日本勢2大会ぶりの入賞を飾った。粘り強い走りで、2時間10分41秒の6位だった。世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、同種目3人目の2連覇を飾った。

 ◇  ◇  ◇

陸上男子マラソンのメダリスト3人、6位入賞の大迫らはナイキのシューズを履いていた。同社は1強として「厚底シューズ時代」をリードするが、アシックスなど他社も参戦し、競争は激化。厚底と薄底シューズの比較実験を行った環太平洋大陸上部の中長距離コーチを務める吉岡利貢教授(43)は、厚底シューズを履くと「長距離選手が跳躍選手になったようなバネが生まれる」と話す。

厚底の利点は衝撃の吸収度合いだ。さらに内蔵のカーボンファイバー製プレートの力もあいまって、推進力が高まる。つまり、より前に進む。昨年12月の実験では5人が底の厚さ33ミリと20ミリの2足を履いて比較。5回連続ジャンプし接地時間と跳んだ高さを計測すると、明らかに厚底の方が高く跳んだという。バネが生まれれば、同じ速度で走った際に費やすエネルギーを減らすことができる。1キロ走るために必要な酸素摂取量を比較すると、厚底の方が少なく、計算すると「マラソンでは約10分タイムが縮まる」と同教授は話す。

日本人は伝統的に、軽さを求め薄底を好む傾向があった。「軽くて薄い靴に耐えられる脚を鍛えるのが、日本人の戦略だった」。しかし厚底も進化。記録更新が続き、世界陸連は昨年8月に剛性プレートは1枚まで、道路競技では底の厚さ最大40ミリの制限を設けた。同教授は「厚底化で選手のフォームは良くなる。それも記録更新を助けているし、良いこと」と分析している。【保坂果那】