16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの羽根田卓也(34=ミキハウス)は決勝で10位で、2大会連続メダルとはならなかった。

上位10人による決勝にぎりぎり滑り込んだ羽根田は、決勝で最初に登場。序盤から果敢に攻める姿勢を見たが、ゲートに接触するペナルティー(1回につき2秒加算)2回分を含めて109秒30と記録を伸ばせず、その後にスタートした選手に次々と上回られた。

16年リオデジャネイロ五輪では、日本勢のみならずアジア勢として初のカヌー競技での銅メダルを獲得。自身の知名度は大きく上がっても、競技に対するひたむきさに変化はなかった。元カヌー選手でジュニア日本代表だった、3歳上の兄・翔太朗さんは「昔から芯が強く、ぶれない。ちやほやされるようになっても、カヌーと向かいあう姿は以前と同じ」と弟を評する。

コロナ禍でのステイホーム期間中に羽根田は、水を張った浴槽にパドルを入れてこぐ動作を繰り返す動画を投稿するなど、自宅での練習風景を公開した。大きな反響を受けたが、「外で練習できないからといって、トレーニングをやめるわけにはいかない。家にいなければいけないのなら、そこでトレーニングするのが自分の日常。それを当たり前に実践してアップしただけ」と平然と振り返る。それでも、ファンから多くの感想が届いたことは励みになったとも口にし、「結果を出すことはスポーツ選手の仕事の1つであるけれど、そこに向かうために取り組む姿勢を示し、何かを感じてもらうことも大事なことだと思った」。

五輪出場は今回が4度目。高校3年で日本選手権を制した逸材は、国内外の大会で結果を残し続けてきた。さまざまなタイトルを手にしてきたなかで、「自分の競技人生でいちばん大切な大会」と決意を込めて臨んだ東京五輪。再び表彰台には立てなかったが、全力でこぎきった。【奥岡幹浩】