メダルを最初にかんだのは誰か-。名古屋市の河村たかし市長が東京五輪ソフトボール日本代表の後藤希友の金メダルをかんで問題になった。一方で選手自身が表彰式後にメダルをかむポーズは、五輪の「定番」。00年シドニー大会女子マラソンのQちゃん(高橋尚子)などが有名だが、その起源は意外と古くはない。

日本の「第1号」は、96年アトランタ大会柔道男子の中村兼三と言われる。当時の日刊スポーツは1面に「メダルを食べちゃうぞ!」の見出しでとともに写真を掲載。その後、国内でも「定番」となった。

世界では? 有名なのは88年ソウル大会競泳男子200メートル自由形で優勝したダンカン・アームストロング(オーストラリア)。世界ランク24位ながら西ドイツのグロスと米国のビオンディという2人のスーパースターに割って入りまさかの優勝。自分でも信じられなかったのか、メダルが本物か確かめたかったのか、興奮して歯を立てた。翌日、世界中の新聞には「金メダルをがぶり」という見出しと写真が掲載された。

ただ、メダルをかむ行為は以前にもあった。84年ロス五輪レスリング金の富山英明は自叙伝「夢を喰う」の表紙でメダルをかんでいる。「神聖な物をかむなんて許されないこと。まあ、引退したからJOCに怒られても関係ないと思ってやったけど」。ちなみに、富山は今大会、選手村副村長を務めている。

メダルをかむのは顔に近づけるため。表情をアップで撮りたいカメラマンのリクエストがほとんど。時代劇で小判をかむように金の真偽を確かめるためという説もあるが、五輪の金メダルは純金ではなくメッキ。銀メダルの上に最低6グラムの金をかぶせているだけなので、純金のように軟らかくはない。

今大会は「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」が行われた。使用済みの携帯電話や小型家電を集めて金属を再利用。金32キロ、銀3500キロ、銅2200キロを確保して、作られた。もちろん、大会史上初の試み。河村市長がかんだのは、元誰かの携帯電話かもしれない。