世界選手権覇者の堀米雄斗(22=XFLAG)が、37・18点で金メダルを獲得した。45秒間2回滑る「ラン」と一発の技で競う「ベストトリック」5回で競われ、予選ではベストトリックでミスが目立ち6位。表彰台すら一時は危ぶまれたが、その後は高い修正力を見せた。

上位8人よる決勝戦ではベストトリックで9点台を連発。4本目で中央のレールから得意の「ノーリー」を決め、この日最高の9・50点。着地が決まると思わず両手をたたき喜びを表した。最後の5本目で9・30点を加え、日本代表の早川大輔コーチと抱擁。2位以下に1点以上差を付けての金メダル獲得に、堀米は「すごいシンプルなんですけど、本当にうれしいです。地元江東区で生まれて、ずっとスケボーだけしてきた。五輪競技に決まった時は遠すぎたが、いろいろ積み重ねていくうちに近づいていって、オリンピックという場所に立てて本当にうれしい」と顔をほころばせた。

五輪正式競技として採用が決まった時は、高校3年生。堀米は「実感が湧かない」と反応し、「もちろん選ばれたら頑張りますけど、あまりピンときてない。オリンピックだけが目標じゃないので」とも語っていた。

高校卒業後の17年から本格的にアメリカに拠点を移した。同年には世界最高峰のプロツアー、ストリートリーグ(SLS)で3位に入り、翌年には3勝。日本人初の快挙を成し遂げた。 その動向は今や高い注目が集まる。普段練習の様子など公開しているインスグラムのフォロワーは25日時点で75・4万人。MLBの大谷翔平(106万人)にこそ及ばないが、NBAの八村塁(49・2万人)を上回る発信力。東京五輪に出場するアスリートの中でも注目度が高い1人だ。海を渡り競技に臨んできた中で、五輪に近づき予選が本格化すると考え方にも変化が生まれた。

「金メダルを取りたい」と公言するようになり出場を熱望。五輪予選最終戦となる世界選手権で優勝後に流れた国歌を聴いて、「いつも自分のために滑っていたけど、(国歌流れた時)日本を背負う気持ちを感じました」。

採点競技で争われるスケートボードは、高度なトリックを組み合わせながら、いかに自分独自のスタイルを発揮できるかが勝敗のポイントになる。高難度の「ノーリー・バックサイド270ノーズスライド」のように新しいトリックを次々と大会で成功させてきた堀米も、最初はインターネットやSNSでアップされる憧れのスケーターの動画を見ながら、まねるところから始まった。

「遊び」の感覚でがむしゃらにデッキに乗るのは、6歳の始めた頃から変わらない。誰も成功したことのない「ヤバいトリック」を追い求める競技の魅力は「終わりながないところ。自分だけできる新しいトリックとかできても、そこから先もある。自分のオリジナルを突き詰めています」と話す。

昨年秋には長年の夢だった「アメリカで家を買う」ことを実現。大きな庭には練習場も併設し、新型コロナウイルスの影響で外出を控える中でも練習に打ち込む環境ができた。1年延期を経て、生まれ故郷の東京・江東区で行われた初の五輪。本場アメリカで「YUTO HORIGOME」の名で知れ渡る下町スケーターが、期待に応える活躍を見せた。【平山連】

◆堀米雄斗(ほりごめ・ゆうと)1999年(平11)1月7日、東京・江東区生まれ。バーチカル、ストリートを高いレベルでこなす国内屈指のオールラウンダー。高校卒業後の17年から本格的にアメリカに活動拠点を移した。ストリートリーグやXゲーム優勝を果たし、五輪予選世界ランキングは2位。