16年リオデジャネイロ五輪金メダルの川井梨紗子(26=ジャパンビバレッジ)が2連覇を成し遂げた。

決勝でクラチキナ(ベラルーシ)を5-0で下した。前日4日の62キロ級の妹友香子(23)とともに、日本勢として同一大会で初の姉妹で金メダリストとなった。

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「姉妹の金」を、母初江さん(51)は会場近くのホテルのテレビで見た。「良かった。ホッとしていました。つらくて、苦しくて、しんどかったけれど、最後にこういう日が来て、良かった」。会場と結ばれたネットで梨紗子の表彰は見た。「おめでとう」と声はかけたが、タイムラグがあって会話にはならない。抱き締めることはもちろん、会えもしない。それでも、2人の快挙に目頭を熱くした。

元レスリング日本代表の初江さんは18歳で世界選手権に出場。五輪を目指したが、採用が見送られ91年に競技を離れた。92年に元学生王者で石川県で教員をしていた孝人さんと結婚。梨紗子が小2でレスリングを始めた直後、10年ぶりに現場に戻った。母として、コーチとして、娘たちの成長を見守ってきた。それは、至学館入学で家を離れても変わらなかった。

「姉妹の目標」が「川井家の目標」になってからが大変だった。梨紗子が伊調馨に敗れて「やめたい」と言い出したこと、その代表権争いを当時の協会のゴタゴタに絡めて面白おかしく扱われたこと、石川県レスリング協会会長とのゴタゴタ…。「言い出したら、きりがない」と言葉はのみ込んだが、家族にしか分からない葛藤があったはずだ。

それでも、東京五輪にたどりついた。「本当はこういう(新型コロナの)状況だし、石川でテレビも考えたけれど、やっぱり少しでも近くで応援したくて」と初江さん。「川井家」で2人の活躍を見守った。

姉妹が並んだ会見で、梨紗子が両親への感謝を口にした。「本人より見ていることしかできない家族の方が苦しかったのでは。感謝しかない」。友香子も「うれしいときも悔しいときも、近くで寄り添ってくれた」と話した。それを聞いた初江さんは「泣けちゃいますね」。5年間を振り返るように言った。【荻島弘一】