なでしこが勝った。東京に続く2大会連続6度目の五輪出場をつかみ取った。女子日本代表「なでしこジャパン」(FIFAランキング8位)が、負けたら終わりのパリ五輪切符をかけた決戦で、北朝鮮(同9位)を2-1で破った。「熱男」の愛称で親しまれる池田太監督(53)に乗せられたイレブンは、前半26分にセットプレーからDF高橋はな(24=三菱重工浦和)が先制。後半31分にはMF藤野あおば(20=日テレ・東京ヴェルディ)が追加点を奪った。プレッシャーのかかる大一番を熱量で勝ちきり、パリでの金メダルに挑む。

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女子サッカーにおける五輪の価値は、W杯よりも高いと言われる。国民の注目度が五輪の方が高いこともあるが、W杯と五輪が2年連続で開催され、五輪後は次の2大大会まで3年の空白ができる日程的なことが大きい。今回のパリ五輪出場可否は、未来を大きく影響するものだった。

89年に6チームでスタートした日本女子サッカーリーグ。さまざまな企業が運営に力を注ぎ始めた。金額は高くなくても一部「プロ」契約もあったため、世界強国から外国人トップ選手も集結。一時は「世界最高峰」とされたこともあった。だが、経済的な問題もあり企業チーム撤退が相次ぎ、外国人枠撤廃を含み、縮小化。澤穂希がプロ契約を中止され米国行きを決断した時期でもあった。そんな中で、00年シドニー五輪出場を逃した。一気に縮小に拍車。そんな危機で迎えた04年のアテネ五輪アジア最終予選の北朝鮮戦に出場した澤は「(負けたら)日本の女子サッカーの今後はないぞと思っていた」と振り返るほどだった。

直後、Jリーグ川淵三郎チェアマンが「女子も力を」と先頭をきり、アテネ五輪前に「なでしこジャパン」の愛称を公募で決定した。08年北京五輪で4強入りし、11年W杯優勝の足掛かりに。宮間あやも「なでしこをブームではなく文化に」を合言葉に、12年ロンドン五輪準優勝。国民栄誉賞を受賞するなど、社会現象となった中で、「私たちは勝ち続けなくてはいけない。そうでなければ、まだまだ、文化にならない」と金メダルメンバーを中心に、15年W杯も準優勝を果たした。

しかし…大黒柱の澤が引退。平均年齢27・15歳ともっとも円熟味を増したはずだった16年リオ五輪予選で敗退の憂き目に遭った。世界のトップを走ったなでしこが、まさかの結果に。露出は一気に減り、注目度も他の競技に奪われた。

予選のなかった21年東京大会で8強で終わり、池田体制で臨んだ23年W杯もベスト8。世界トップに返り咲くことはできていない。パリ行きを失えば、27年W杯まで世界大会から遠ざかってしまうところだった。21年にWEリーグが開幕。初のプロ化で、女子サッカー界の発展のための足場が作られた。ただ、観客動員では苦戦を強いられており、なでしこジャパンと両輪での盛り上がりに向けて「パリ」は不可欠だった。今後の未来に向けても、今回の北朝鮮戦勝利は、あの20年前と同様かそれ以上に価値がありそうだ。そうしなくてはいけない。【なでしこジャパン担当=佐藤成】

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なでしこ、運命の北朝鮮戦 勝てばパリ五輪、負ければ終わりのアジア最終予選/ライブ速報