浜松開誠館(静岡)の青嶋文明監督(50)が男泣きした。試合終了の笛が鳴ると、コーチらと抱き合い、ピッチになだれ込んだ。05年の創部から14年目での悲願。元清水エスパルスのFWだった指揮官は、思い入れの強い「日本平」でうれし涙を流した。

「これまで自分の力不足で悔しい思いをさせてきてしまった。優勝の瞬間は、卒業してきた選手たちの涙を思い出しました」

言葉通り、苦杯をなめ続けてきた。県総体では過去2度の準優勝。16年の県選手権決勝では、1点リードの残り12分間から2失点し、全国切符を逃した。

自身は浜松市出身。高校は清水商(現清水桜が丘)に進学し、2年時には全国選手権で優勝した。「静岡では、中部勢を倒さなければ全国に行けない」。重ねてきた経験を選手たちに伝えながら、闘志を前面に出すスタイルを構築した。他校から「パワープレーチーム」と批判されながらも、走り勝つ指導を貫いた。その上で、15年から技術に優れた選手も入部させ、着実にチーム力を上げてきた。

だが、有望選手の多くが中部の強豪校に進学する状況が変わらない中で、頂点に立った意義は大きい。「自分よりも、周りの人が喜んでくれてうれしかったです」。西部勢として41年ぶりに臨む全国選手権に向けては「ボールと人の動くサッカーをしたい。まずは初戦突破。これから、全国に通用するチームを作ります」と宣言した。【神谷亮磨】

◆青嶋文明(あおしま・ふみあき)1968年(昭43)7月12日、浜松市生まれ。清水商卒業後の87年、日本リーグ1部ヤマハ発動機に入部。91年に清水の前身、清水FCへ移籍。Jリーグ元年の93年に6試合3得点。96年に本田技研に移り、JFL優勝に貢献。98年に現役引退。02年から浜松開誠館中で指導歴をスタート。