日本代表MF久保建英(21)が16日、レアル・ソシエダードの一員として正念場を迎える。

Rソシエダードは16日、欧州リーグ決勝トーナメント1回戦第2戦でローマと対戦する。先週アウェーで行われた第1戦に0-2で敗れ、準々決勝に進出するためには逆転勝利が必須となるが、今季最低と言える成績不振に陥る非常に厳しい中でこの一戦に挑むことになる。

Rソシエダードは今季前半戦、慢性的に多くのけが人を抱えながらも、欧州リーグ・1次リーグではマンチェスター・ユナイテッドを抑えて首位通過し、スペインリーグでは3位に浮上し、好調だった。さらにワールドカップ(W杯)前から1月にかけ、クラブ史上最多となる公式戦9連勝を達成するなど、これ以上ない充実感を感じていた。

しかし、1月25日の国王杯準々決勝バルセロナ戦に敗れたことで状況が一転。それ以降、思うように勝ち星を挙げられていない。公式戦ここ9試合の成績は1勝4分け5敗、そして公式戦5連続およびスペインリーグ4試合連続未勝利中と、調子を大きく崩している。

あれほど好調だったチームがここまで失速した原因は何なのだろうか? その大きな理由としてW杯後のタイトな日程および、けが人やコンディション不良の選手が続出したことが挙げられる。

特に第19節レアル・マドリード戦と第20節バリャドリード戦では負傷者数が今季最高の9人にまで達していた。これによりチームはバランスを失い、守備では致命的なミスを何度も繰り返し、攻撃では決定力を欠き、公式戦ここ5試合でわずか2点しか決めていない。

特に現地ではシルバ不在が成績不振に直結しているとも言われていた。負の連鎖が始まった国王杯準決勝バルセロナ戦を皮切りに、シルバは6試合続けて負傷欠場を余儀なくされた。

そこで注目されたのはシルバのRソシエダード加入後の勝率データである。シルバ先発時の公式戦勝率が約7割であるのに対し不在時は約3割と、その存在が勝敗を左右していることが顕著になっている。

替えが効かないブライス・メンデスは疲労がたまり、シーズン前半戦で見せたような輝きを完全に失っている。チームで2番目に得点を決めている選手だが、大みそかの第15節オサスナ戦を最後に、現在、出場した公式戦13試合連続で無得点。

チーム得点王のセルロートも膝に問題を抱えながらプレーしていることでパフォーマンスが急降下。公式戦最後の得点は6試合前と不調に陥っている。

また、アルグアシル監督がまだ本調子ではないオヤルサバルを信頼し、先発起用し続けていることも結果の出ない大きな理由の1つに挙げられるかもしれない。

オヤルサバルは昨年3月に左膝前十字靭帯(じんたい)断裂の大けがを負った後、大みそかに約9カ月ぶりの戦列復帰を果たした。それ以降、リーグ戦では11試合(先発6試合)、573分間出場し、2得点1アシストを記録。数字上はそこまで悪くはないように見えるが、長期離脱しながらも昨季のチーム得点王となり、スペイン代表のレギュラーだったことを考えると、チームのエースとしては物足りなさが残る。

さらにアルグアシル監督は、オヤルサバルを起用することで、システムに迷いが生じていた。シルバが負傷したこともあり、第20節バリャドリード戦でシーズン前半戦に成功を収めていた中盤ダイヤモンド型の4-4-2から、左サイドでのプレーを得意とするオヤルサバルのためのシステムとも言うべき4-3-3に変更した。しかしその4試合の結果は1勝1分け2敗。シルバが戦列復帰した第24節カディス戦から再び4-4-2に戻すも一度狂った歯車を修正できておらず、さらに3試合勝てていない。

チーム全体が調子を崩す中で迎えるローマ戦だが、絶好調の久保が大きな光をもたらす選手となりそうだ。

前線のさまざまなポジションにうまく対応し、第20節バリャドリード戦から第22節セルタ戦にかけて3節連続でMVPに輝き、さらにファン投票による2月のチーム月間MVPにも選出され、現在最もパフォーマンスの良い選手と言えるだろう。

先週末の第25節マジョルカ戦は公式戦8試合連続で先発出場したことによるローテーションでベンチスタートになり、古巣のサポーターに拍手を受けながら終盤に少し出場しただけだったため、万全の状態でローマ戦に臨むことができそうだ。

久保はローマ戦に向け、「0-2を逆転し、そのことが10年後に語り継がれるようなラ・レアル(※Rソシエダードの愛称)の歴史の一部になりたい。それを自分のゴールで成し遂げられたら最高だ。僕は好調だし、結果はともかくチームも調子はいいと思うので、そのことを証明する必要がある」と語っている。

Rソシエダードはこれまで欧州リーグの1次リーグを突破した後、決勝トーナメント初戦を3度戦うも一度も次ラウンドに進んだことがない。そのためローマ戦は非常に難しいミッションとなるが、久保の意気込みに期待し、クラブ初となる偉業を達成できることを願っている。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)