14年サッカーW杯優勝のドイツ代表を支えた分析グループ「チーム・ケルン」の一員で、現在はケルンを拠点に指導者として活動する浜野裕樹氏(34)が現地イスタンブールで取材した。「ドイツ・リポート」番外編として欧州CLファイナルをリポートする。
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6月10日、午後10時。8万人で埋まったアタテュルク・オリンピック・スタジアムの熱気は試合開始から最高潮だった。その立ち上がり、シティーは敵陣でプレッシャーをかけた。
ベルナルド・シウバ、グリーリッシュが猛烈な勢いでGKまでプレスをかける。その意図は相手の攻撃を中央に誘導し、グラウンダーのパスを中央で待ち構える選手が激しく奪いにかかる。そこで長いボールを蹴ってきたら後ろで回収するということだった。
対するインテルもじれなかった。左右にボールを散らし、シティーをおびき出してプレーする。グラウンダーでボールを奪われず、ロングボールにも前線でジェコが体を張り、簡単にはセカンドボールを与えなかった。ただアタッキングサードでの意思の疎通が欠けていた。
2年前の決勝で敗れているグアルディオラ監督の行動は興味深かった。指示を出す際、ピッチに一度ひざまずき祈るしぐさも。ここに懸ける思いが表れていた。そんな中、前半にデブルイネが足を痛めて無念の途中交代。スルーパスでこの日もハーランドの得点機を演出していただけに、その後のチームの戦い方にも影響した。
お互いに決定的な場面はなく、我慢が続く展開となった。後半の序盤にジェコに代わりルカクが入り、さらに前線にボールが入った時の攻撃の鋭さを増していく。その直後にシティーのミスからインテルはGKと1対1の好機を得たが生かすことはできなかった。
そして後半23分に試合が動いた。シティーはペナルティーエリア(PA)に人数を送り、クロスを入れた。インテルは「PA内では相手をマンマークする」基本に忠実だった。だが、この守りの欠点はボールがこぼれた際に後ろから入ってきた選手への対応が非常に難しいところ。案の定、ボランチのロドリが後ろから走り込み、フリーで選手の間を縫って蹴り入れた。
インテルは終盤2度の決定機を得た。だがバーに嫌われ、良いポジションにいたGKに阻まれた。ここまで爆発的な得点力を見せたハーランドを抑えながらも1点が遠かった。イタリアのお家芸「1-0」でシティーが逃げ切るとは、誰が予想しただろうか。
大会得点王に輝いたハーランドは優勝カップを前に首を振り、チームが成し遂げたことがまだ信じられないという表情を浮かべた。その横でグアルディオラは「ビッグイヤー」にウィンクをした。このシーンは、シティーにとってどれだけこのタイトルが大事であったかを表していた。
(UEFA・A級コーチ)
◆浜野裕樹(はまの・ゆうき)1988年(昭63)7月4日生まれ、横浜市出身。日体大卒、ケルン体育大に留学。UEFA・A級ライセンスを保持する指導者。ドイツ生活11年目。

