体重無差別で柔道日本一を決める、伝統の全日本選手権が行われ、平成最後の大会で、17年世界選手権男子100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)が、決勝で12年全日本王者の加藤博剛(千葉県警)を延長の末、優勢勝ちし、初優勝を果たした。

 

日刊スポーツ評論家の古賀稔彦氏、“平成の三四郎”による、平成最後の全日本の評論をお届けする。

 

無差別で戦うからこそ、階級の相性が出てくる。ウルフ選手はその利点を最大限生かして戦った。超級の選手は超級同士の戦いのリズムがある。体力の減りも同様で、それが同階級なら問題にはならない。だが、無差別で下の階級、体力的には遜色がない100キロ級と組むと、組み手争いや技出しが速く、呼吸のリズムも崩されて体力消耗が速くなる。スタミナ自慢で1回の組み手で仕留める技があるウルフ選手にとっては、逆に自分のリズムも作りやすく、後半勝負という戦略を立てやすかった。

現在のルールをうまく利用していることも大きい。引き手で相手の袖口を持つが、以前は反則だった規則が今は技を出せば許容されることになっている。ここを確保することで自分の組み手を作り、相手に重圧をかけることができている。

最後に、令和の全日本選手権には地方からの猛者の出現を期待したい。超級ではなく90、81、73キロ級などの出場者が出れば、初戦からワクワクするようなカードがそろう。私が90年大会に中量級で出場し、決勝に進んだ時は非常に盛り上がっていただいた。無差別だからこその魅力が見られる令和の時代になってほしい。(一般社団法人古賀塾塾長)