Wリーグ・新潟BBラビッツの主将、F井上愛(30)が今季限りで引退する。17-18年に続き2度目の主将を務めた今季は、山梨戦(2月22日、五泉市村松体育館)で1168日ぶりのホーム戦勝利に導くなど、精神的支柱としてチームをけん引した。8年間の現役生活と新潟への思いを2回に渡ってお届けします。

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BBラビッツの精神的支柱だった井上がコートを去る。今季は1勝15敗(新型コロナウイルスの影響でリーグ戦短縮)で3年連続最下位の12位。それでも山梨戦の1勝は大きかった。新潟での8年間は選手としてやり切り、これから指導者を目指すきっかけになった。

-リーグ戦は2月26日に6試合を残し打ち切り。中途半端な形で終わってしまった

仕方がないですよね。でも、報道で大相撲やBリーグが無観客試合をやっていたのを見て「できたかも」と思ったり。それでも、決まってしまったし…「ああ、終わったな」と。ただ、引退するにあたって「あの時ああしていれば」という後悔は不思議となかったです。

-引退を決めたのは

今季が始まるときには決めていました。最後のシーズンだと。ひざ、腰とケガが続いて、毎年きつくなっていった。実は昨季で引退するつもりでいたんです。クラブ側から期待していただいて、もう1年やることに。1日1日が勝負だと思っていたので「まだプレーしたかったな」という気持ちはないです。やり切りました。

-山梨戦で16年12月11日のアイシンAW戦以来、1168日ぶりのホーム戦勝利

この試合で今のメンバー全員がホームでの勝利を経験できた。本当に喜んでくれるファンの方々の前で勝って、「良かったね」と言ってもらえたことがうれしかったです。結局、この1勝だけだったけど、肩の荷が下りたというか、役目は終わったなと感じた。

-どんな8年だった

終わってみればあっという間。でも、内容の濃い8年でした。入団したときは、自分が主将になるなんて思ってもみなかった(笑い)。ましてや8年も選手でいられるなんて。

-続けられた要因は

新人のときは岩村裕美さん(38=現神戸医療福祉大大・女子監督)、出岐奏さん、星希望さんら先輩たちについていくうちに、個人的な結果を残せた。2年目に腰とひざを痛めて、想像以上に体が動かなくなった。落ち込んでいたときに当時の監督の衛藤晃平さん(37)から「必要だから」と言ってもらって奮起しました。周囲に支えられてやってきました。

-引退後は

夢ができました。指導者になりたい。B級ライセンスは昨年取得しました。本当になりたいと思ったのは最近ですね。昨年8月にB級の講習を受けに行き、各地の高校の指導者の方たちと話をしました。「レベルの高い指導をしているんだな」と。育成世代をきっちり教えられるようになれば、Wリーグにいい選手を送り込める。それを自分の手でやってみたくなった。Wリーグを盛り上げたい。Bリーグに負けないように。

-母校・英明高(香川)の監督でもある父晃さん(63)、アシスタントコーチの姉、塩入望さん(33)の影響も

いずれ地元の香川に戻って、父や姉の力になりたいと思います。22年の全国高校総体で香川がバスケの会場になります。そこで助けになって、ベンチに入っていられれば。指導者には絶対になりたくなかったんです(笑い)。高校時代、身内に教えられるというのが本当に嫌で。いろいろと比べられましたし。でも、講習で出会った指導者の方々が工夫や勉強をし、大変なことも多いとわかった。それなら自分が父や姉のサポートをしようと決めました。(つづく)【聞き手・斎藤慎一郎】

◆井上愛(いのうえ・めぐみ)1990年(平2)1月6日生まれ、香川県出身。英明高(香川)では1年からレギュラー。3年間、全国高校総体と全国高校選抜大会に連続出場した。鹿屋体大に進学、4年連続で全日本大学選手権出場。12年、新潟入団。16-17年、17-18年、19-20年とWリーグオールスター戦出場。17-18年、19-20年は主将を務めた。18年4月、アジア大会の日本代表候補合宿に初参加。ポジションF。172センチ、63キロ。