運ばれてきたメダルをまじまじと見つめて、小首をかしげて胸に収める…東京五輪の表彰式で、選手のちょっとしたしぐさが気になった。

最高峰の勝負、結果は誰にも分からない。事前のレクチャーなどなかったのだろう。メダルを受け取ってから、どちらが表?どちらが裏?と迷い、結局裏面を前にして記念撮影に臨むメダリストが多かったように見えた。

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悲願の金メダルに輝いた侍ジャパンは、24人中12人が裏面を前に向け表彰台に立った。ウルフ・アロンら柔道勢も。卓球混合ダブルスで金メダルに輝いた水谷隼と伊藤美誠は、それぞれが違う方を向けてメダルを披露。元卓球日本代表の松平賢二は、ツイッターで「(水谷)隼のメダル、裏表逆なんだよなー」とつぶやいた。

こうした現象が起きた理由の1つに、新型コロナ感染防止対策として採用された「セルフ方式」のメダル授与が挙げられる。

プレゼンターが運ぶトレーから選手がメダルを取り、自分で首に掛ける。今までは首にかけてもらえたため、表裏を考える必要もなかった。トレー上のメダルは、裏側を上にして並べられていた。そのまま手に取って首にかければ、表面が前を向く仕組みなのだが、こうした置き方も選手を惑わせる一因になっていたようだ。

実際のところ、どれくらいのメダリストが裏側を向けていたのか。表彰式と、直後の記念撮影を軸に、日本選手が獲得したメダル58個、金銀銅メダリストのべ131人を調査してみた。

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五輪メダルは、規定により「勝利の女神ニケ像」が描かれている面が表とされている。裏面は開催国が決める。今大会のテーマは「光と輝き」。渦を巻くような曲線的デザインでアスリートや周りで支えている人たちのエネルギーを表現し、多様性の尊さも込めた。

表を見せるのがフォーマルのように感じてしまうが、もちろん表と裏、どちらが正解という訳ではない。開催国が独自に決めることができる裏面が、メダルラッシュと相まって思わぬ形でクローズアップされ、ホスト国としてはうれしい気にもなる。表で裏でいろいろあった東京五輪だが、誇らしい日本58メダルは表も裏も目に焼き付けることができた。【加藤雅敏】