百戦錬磨の指揮官が、発展途上のチームを勝利に導く。今日3日、群馬・高崎で開幕の女子バスケットボール「Wリーグ オータムカップ」に出場するアランマーレ秋田は、東北勢で初めて10月開幕のWリーグに参入する。20年4月から指揮を執る小嶋裕二三(ひろふみ)ヘッドコーチ(HC、54)は、山形銀行やデンソーHCなど、指導者として約30年のキャリアを持つ。これまでに積み上げた経験を生かし、姿勢や言葉で選手たちの背中を押していく。(敬称略)

【取材・構成=相沢孔志】

みなぎる闘志を胸に、タクトを振る。小嶋は青学大を卒業後、91年にNECで指導者人生を歩み始めた。以降も山形銀行やWリーグ強豪のデンソーなどでHCを歴任。さらに、98年は女子日本代表のアシスタントコーチとしてアジア大会金メダル獲得に貢献。12年ロンドンオリンピック(五輪)世界最終予選にも帯同した。幾多の場面を目に焼きつけた約30年間、貫き続けた信条を教えてくれた。

小嶋 状況が変わる中でも、その時にできる最善を尽くすだけ。良い時はみんな調子が良いと思うんですけど、調子が悪い時もその時にできる100%、101%を目指す。最善を尽くすということが一番大事かなと思います。

今季チームが掲げた目標は、選手全員で決めた「攻め続ける」。以前も選手主体で目標を設定し、それに伴う具体的な勝利数や成績を掲げてきたが、今回は違う。

小嶋 (具体的な成績は)参入1年目なので出せない。絶対に間違いなく壁にぶつかると思うので。その時に弱気になったり、自分たちがどうすればいいか戸惑ったり、不安になることがある。その中で選手から「攻め続ける」という提案があった。(自分たちが)やるべきことを、どんどん攻め続けるようにやっていくという意味だったので、それならいいんじゃないかなと。外部の方には分かりづらい目標になったと思いますが、内部で共有することが大事です。そういう意味で、1年目としてはいい目標なのかなと思います。

手腕が期待される今季。女子日本代表が東京五輪で銀メダルを獲得し、全国から注目が寄せられている中でリーグ戦に挑む。

小嶋 代表が銀メダルを取ったこと自体、我々にしてもすごいことだと思いますし、うれしいことですよね。また新規参入の年に代表選手が頑張って、その選手たちと戦えることはアランマーレの選手にとっても、私にとってもすごく意義のあることだと思います。

08~19年まで所属したデンソーから高田真希(32)と赤穂ひまわり(23)が選出。中心選手として活躍した。

小嶋 昔、同じチームでコーチをしましたが、あそこまで活躍してしまうと、すっかり別の世界の人になってしまいました。簡単ではないと思いますが、そういう経験を積んで、さらに上手になった彼女たちに一泡吹かせてやりたいなとは思いますね。

古巣戦は、第5週の11月13、14日に秋田県立体育館で予定されている。対戦を心待ちにしているが、「試合になったら目の前の試合に集中すること以外はできなくなってしまうので、どことやるにしても、その時にできる万全の準備をやって最善を尽くす。ただそれだけですね」と勝利は譲らない気持ちだ。

チーム創設が15年。そこから6年を経て念願の参戦。まだまだ発展途上ではあるが、将来への思いも語った。

小嶋 前のチームの時には日本代表選手を1人でも多く輩出したいという思いでやってきました。ここでもやはり最終的な目標は、日本一になることと日本代表選手を何人か出すということ。特にオリンピックの選手を輩出したいなと思います。

アランマーレは第2週の10月23、24日に秋田・増田体育館で行われるアイシンウィングスとの開幕カードに臨む。バスケットボールの文化が根付く秋田を盛り上げ、応援されるチームになるために、全力を注いでいく。

<一問一答>

言葉の端々に選手への期待が込められていた。小嶋HCがチームの現状を語った。

-開幕に向けてチームの状況は

小嶋 Wリーグのチームと練習試合を行い、体力やスピード、コンタクト、プレーの正確性の差を痛感している。口では何度も酸っぱく言っていたが、選手たちは実際に経験して違いを体感したと思う。

-試合を経て見つかった課題は

小嶋 まず一番解決しなければいけないのは、リバウンド。攻撃でリバウンドを取られて守備に転じたり、守備でリバウンドを取られてまたシュートを打たれたりしてしまう。相手のミスショットのリバウンドを必ず1回で取ることをしていかないといけない。身長が低いので、守りの部分でいかに相手にプレッシャーをかけられるかを改善していきたい。

-チームのキーマンになる選手は

小嶋 キーマンは全員だと思うのですが、役割分担をしなければいけないので、役割ごとにキーマンが出てくる。中でも、平松飛鳥(27=前東京羽田)と佐藤ひかる(26=前日立)の2選手がWリーグを経験済みで、ほかの選手よりたくさん経験をしている。Wリーグ基準の考え方やプレーをチームに植えつけてもらいたい。

-2人にプレー面で期待することは

小嶋 平松は攻め込むことができる選手なので、相手ディフェンスの中までしっかり攻め込むこと。そうすることで、相手のディフェンスを引きつけて外側からのシュートチャンスも作ることができると思うので、そういう役割を担ってほしい。佐藤はシュートがよく入る選手なので、シュートチャンスを的確に成功につなげてほしいですね。

-参入初年度。どういったバスケットを展開したいか

小嶋 東京五輪女子日本代表が出場したチームの中で2番目に身長が低く、大きいチームとは10センチ以上違う中で銀メダルを獲得した。あれは正しく我々がやらないといけないスタイル。しつこく守っていやな気持ちにして、ミスを誘発させて攻め込む。2点はどうしても積み重ねられてしまうので、逆にこっちは3点を積み重ねていく。距離があってリスクはあるが、効率の良い点数の取り方を考えていかないといけない。小さくてもやればできるということは今回教えてくれたと思うので、それを意気に感じて選手たちは戦ってほしい。

◆小嶋裕二三(こじま・ひろふみ)1967年(昭42)7月23日生まれ、横浜市出身。現役時代のポジションはポイントガード。91年、NECで指導者となる。00~08年まで山形銀行ヘッドコーチ。06年、兵庫国体優勝。10~18年までデンソーヘッドコーチ。20年4月、アランマーレ・ヘッドコーチ就任。