フィギュアスケート男子の冬季オリンピック(五輪)2連覇王者、現在は右足首負傷中の羽生結弦(26=ANA)がグランプリ(GP)シリーズ最終の第6戦ロシア杯(26~28日、ソチ)も欠場することが17日、日本スケート連盟から発表された。

先週末の第4戦NHK杯(東京)に続く欠場で、当然ながら、シリーズ2戦の順位(獲得ポイント)で決まるGPファイナル(12月9~12日、大阪)進出も消滅。右足関節靱帯(じんたい)損傷からの回復に専念し、復帰に集中する。

では、仮に回復が遅れて年末の全日本選手権(12月22~26日)にも出場できなかった場合、来年2月の北京五輪代表の座はどうなるのか。4年に1度、全日本が五輪代表の最終選考会となるため注目されるところだが、日本スケート連盟の竹内洋輔フィギュア強化部長は「(もし全日本に出られなくても)選考の土台からは落ちません」との認識だ。

前提として、羽生は3連覇の権利を唯一持つ北京五輪を目指すかどうか、明言していない。あくまでクワッドアクセル(4回転半)成功の夢を追っている。ただ、本人の意向とは別に、代表選考は条件を満たした全ての選手を対象に行われる。羽生の現状はこうなっている。

まずは選考基準から。

◆フィギュアスケート北京五輪代表選考

シングルは男女ともに最大3枠を確保しており、以下の順に決まる。

(1)全日本選手権の優勝者が1人目

(2)全日本2、3位、GPファイナル出場者の上位2人、全日本終了時点の国際スケート連盟(ISU)シーズンベストスコア上位3人、の中から2人目

(3)最後に(2)で漏れた中からISU世界ランキングなどを総合的に判断して3人目

羽生が順調に回復し、全日本に出て優勝すれば文句なし。出なければ(1)の条件を満たさない。

(2)も全日本に出なければ満たさない。ロシア杯を欠場し、GPファイナルにも出場しないため、年内のISU公認大会への参戦はゼロ。21-22年シーズンのISUベストスコアは「記録なし」となる。

(3)の世界ランキングは現在3位。今季開幕前は1位だったが、ISU公認大会であるGPシリーズに出場していないため、必然的に下がる。現在はGPシリーズ第3戦イタリア大会で優勝した鍵山優真(18=オリエンタルバイオ)が日本勢最高の2位で、第4戦NHK杯を制した宇野昌磨(トヨタ自動車)が6位。それに次ぐのは佐藤駿(フジ・コーポレーション)の19位となっている。

それでも、羽生が北京五輪代表の選考対象に入ってくるのは、過去に大きな実績があるからだ。全日本出場は必須ではあるが「世界選手権3位以内」などの成績を持つ選手が、けが等でやむなく参加できない場合の救済措置がある。

この「3位以内」は、日本連盟によると「直近の成績ではなくキャリアを通して」。羽生は、たとえ直近だとしても今年3月の世界選手権で3位に入っている上、通算では14年と17年に2度の優勝を誇る。2位3回、3位2回と計7度も表彰台に立っている。

右足首の回復に努めている羽生は「動きによっては痛みが出てしまいますが、日常生活では、痛みの影響がなくなってきました。まだスタートラインにはたどり着いていませんが、着実に前に進んでいきます」とのコメントを出した。

竹内強化部長も「前回の平昌(五輪)もNHK杯(の公式練習)で4回転ルッツを跳んで負傷し、全日本を欠場しました。こういった4年前の経験もありますし、我々としては、しっかり回復してくれれば競技力を戻してくれると信じています」と全幅の信頼を寄せている。

全日本選手権まで1カ月強。仮に出場できなくても五輪代表候補に入って選考される、が答えだ。あとは大舞台を目指すか本人の決断次第となる。【木下淳】