フィギュアスケートで北京五輪(オリンピック)男子と団体銅メダル、世界選手権初優勝を飾った宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が26日、子どもたちへ挑戦することの大切さを伝えた。

愛知・豊田市役所を訪れ、所属するトヨタ自動車の本社や、練習拠点の1つである中京大のリンクがある同市の「スポーツ栄誉賞」を受賞。太田稔彦市長(67)らとの歓談では「プレッシャー」についての話題となり、宇野は落ち着いた口調で自己分析した。

「僕は皆さんが思っているほど本番に強くないですし、プレッシャーにも強くない。だからこそ、より『逃げられる』ようにしています」

「逃げられる」-。

その言葉には、宇野の競技に対するスタンスが凝縮されていた。

「練習で本当に自分が後悔のない練習をする。今年一番思ったのが、やはり成功もうれしいです。ただ『成功よりも、失敗の方が今後の自分に生きるんだ』と経験した時に、失敗っていうのがあまり恐れるものではなくなった。失敗を恐れなくなった時に、プレッシャーや、緊張も、今までより、ちょっと捉え方が変わってきたかなと思います」

太田市長がすかさず「もし、子どもたちに伝えるなら」と尋ねた。「私を子どもと思って」とユーモアを交え、自然体の宇野はまず自らの体験談を明かした。

「僕はずっと小さい頃から、どれだけ人に言われても1度自分で経験しないと、納得できない性格でした。もちろん言ってくださっている方は、僕より先に(今の)僕のような経験をした方。たくさんのアドバイスをくださる。それは僕のことを思ってのことだと思うんですけれど、やはり僕は、自分で経験して、自分が納得したものじゃないと決断を下せなかったです」

そんな宇野が、子どもたちへの思いを言葉にした。

「誰でも失敗はやる。でも『挑戦することに、後ろ向きにならないでほしいな』と思っています。努力が実らなくても、努力したっていうことが無駄にはならない。自分が欲しかった結果は得られないかもしれないですけれど、何か自分のためになる。どのようなことにも挑戦することで、何かしら意味がある。自分が挑戦したことを、大切にしてほしいと思います」

目の前の練習に全力で取り組み、その都度答えを競技会で探し、ここまでのスケート人生を送ってきた。

3月、世界選手権初優勝で1つの「結果」が出た。

だが、結果が全てではないと知っている。

「逃げられる」-。

その言葉の根幹となる宇野なりの思いを、次世代へ分かち合った。【松本航】