元世界32位、14年リオオープン優勝の奈良くるみ(30=安藤証券)が、プロ13年目、最後の瞬間を迎えた。

今大会で引退を表明している奈良は、同期で、07年ウィンブルドン・ジュニア・ダブルス準優勝の時のペア、土居美咲(31=ミキハウス)と組んだ女子ダブルスで1回戦敗退。シングルスは、19日に行われた予選2回戦で敗れているため、すべての試合が終わった。

プロ人生最後のショットは、フォアのリターンだった。惜しくも、相手コートのベースラインを超え、アウトになった。次のマッチポイントを相手に決められ、全てが終わった。

同期でライバルでもあった土居を、名前の美咲にあやかり「みっちゃん」と呼ぶ。「みっちゃんがいなかったら、ここまで来れなかった」。そう話すと、涙がこぼれた。試合後のコート上の引退セレモニーには、今大会に出場している日本女子代表約10人が集まった。

女子ツアーを統括する女子テニス協会(WTA)が発表している勝敗数は、シングルス384勝319敗、ダブルス51勝72敗。身長155・5センチという小柄な体格で、球を拾い、粘り、戦い続けた700試合以上のプロテニス人生。シングルス予選2回戦を終えたときは、「全く悔いはない」と言い切った。

6月5日に閉幕した韓国・昌原のツアー下部大会で優勝。その次の日に、突然「今シーズンでやめるのがいいと感じた」。つらくなったり、ケガをしたり、テニスを嫌いになってやめることだけは避けたかった。「逃げて終わることだけはしたくなかった」。

韓国で優勝したことで「まだ頑張っていると感じることができた」。頑張れるうちに終えることができる。だからこそ、ここが潮時だと悟った。「本当に楽しかった。幸せでした」。コートを一周し、競技人生の幕を閉じた。

◆東レ・パンパシフィックオープンは、9月19日から25日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドでも同時ライブ配信される。