【重慶(中国)=松本航】世界選手権2連覇中でシーズン初戦の宇野昌磨(25=トヨタ自動車)が、今季世界最高の105.25点で首位発進した。

新しいスタイルで表現面に重きを置きつつ、2本の4回転を含むジャンプ全3本を成功。第3戦フランス杯優勝で91.21点の2位アダム・シャオイムファ(フランス)に14.04点差をつけた。

友野一希(上野芝スケートクラブ)は80.50点で6位、山本草太(中京大)は75.48点で8位。フリーは11日に行われる。

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宇野は目元を拭っただけで、表情を変えなかった。中国のファンの歓声に、右手を上げて応えたのみ。今季世界最高の高得点を冷静に受け入れて言い切った。

「すごい『よっしゃ』という気持ちがあったわけでもない。大会で成績を出すということに、そこまでの執着がないのが、緊張感のなさにつながっています」

修正力は経験のたまものだった。前日9日も4回転フリップの調子が上がらず、この日の公式練習も「跳べない原因をひたすら探した。この靴も3年目。いつ壊れてもおかしくない」とテープを巻いて微調整。ランビエル・コーチから「表現も頑張ってほしいけれど、注ぎすぎず、いいタイミングとテンポでいけるように」と送り出された。冒頭の4回転フリップは3.46点の加点と本番で決めきった。終盤は時に跳びはね、氷に膝も当てながら、全身を使った表現で魅了した。

世界選手権3連覇が懸かるシーズン。王者は「表現者として自分の魅力は何か、自信を持って言えるスケーターになりたい」と第2章に手をかけた。昨季までのフリーは時に7本中5本が4回転。得点を争う競技会で勝つには高難度の構成が求められ、つなぎは「ジャンプをより楽にする」ことが主だった。今夏は9月まで「ワンピース・オン・アイス」で主人公ルフィになり、キャラクターを演じるアイスショーに全力投球。新シーズンの準備よりも、ルール制限のないショーでの表現に重きを置いた。

3月の世界選手権フリー以来、230日ぶりの競技会で抱いた感情があった。

「全然スピードもないけれど、表現をやろうとしたところは自分を褒めたい。ジャンプが良かったらいい演技、悪かったら悪い演技というのを、自分に対する採点でやめたい。今日はまずまずだったと思います」

成績にとらわれることなく、自らの理想像を追う。