<阪神4-7横浜>◇29日◇甲子園

 完全なる敵地でも自分の網を仕掛けていた。8回表の4打席目。横浜村田修一内野手(28)が外角に大きな意識を置く。カウント2-2からイメージ通りの146キロ直球が高めに来た。逃すはずがない。高いトップの位置からバットを振り下ろすと、打球は低い弾道で右中間スタンドへ吸い込まれた。今季出場6試合目での1号。甲子園球場は阪神ファンのため息の後、静寂に包まれた。

 2年連続の本塁打王は、興奮などしない。「(1号は)毎年5試合目ぐらいで出ていたので、ボチボチです。1本出たので正直ホッとしてます」。3月19日のWBC韓国戦で右太もも裏を肉離れして、帰国後の診断では30日に全治6週を迎えるはずだった。驚異的な早期実戦復帰だけでなく、初本塁打さえ周囲が予想していた時期を飛び越えてみせた。

 肉体を支える頭脳がある。WBC前、外角に広いストライクゾーン対策に「外は好きなんで、逆に集めてるところを狙う」と話していた。相手を支配する立ち方は甲子園でも変わらなかった。「(相手は)1点を取られたくない状況だったんで、内角は投げづらいと思った」。相手が抱くプレッシャーを手玉に取っていた。

 1点を追う3回表には2死から連打などで満塁となり、中堅左へ逆転の二塁打。「先制された後に若手がつくってくれたチャンスで打てたことの方がうれしい。今までになくベンチに元気がある。引っ張っていくというより、下から持ち上げる感じでいきたい」と話した。

 大矢監督は「村田にエンジンがかかってきた。ボクの方は言うことはない。村田に聞いてください」と全幅の信頼を表した。最下位からの大脱出へ-。男・村田がチームを押し上げる。【今井貴久】

 [2009年4月30日8時27分

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